研究領域 | 量子クラスターで読み解く物質の階層構造 |
研究課題/領域番号 |
18H05407
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
肥山 詠美子 九州大学, 理学研究院, 教授 (10311359)
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研究分担者 |
保坂 淳 大阪大学, 核物理研究センター, 教授 (10259872)
金 賢得 京都大学, 理学研究科, 助教 (30378533)
金田 佳子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (40300678)
NAIDON PASCAL 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (70611979)
土井 琢身 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 専任研究員 (70622554)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | クラスター / 第一原理計算 |
研究実績の概要 |
「クラスター」をキーワードに、ハドロン物理、原子核物理学、原子物理学、分子科学分野の第一線で活躍する研究者を集め、本新学術領域の基本的な問いである「物質階層進化のメカニズム」を理論面から解決することを研究目的として以下のような業績を挙げた。ハドロン物理学では、保坂、肥山と共同研究により、2015年にLHCbで発見されたペンタクオーク、qqqCC-barの実験値を説明すべく、クオーク模型に基づく5体構造研究であり、実験で報告されているエネルギー領域の閾値はすべて再現するようなクオーク間相互作用を使用した。この計算は、散乱チャネルも陽に取り入れたクオーク模型にによる精密5体計算である。しかしながら、本研究では、実験で報告されているエネルギー領域には、共鳴状態を得ることができなかった。代わりに、非常に高いエネルギー領域に、幅の狭い共鳴状態を得ることができた。この計算からわかることは、LHCbで発見された共鳴状態は、メソンーバリオン分子共鳴状態であることを間接的に示唆しているものと予想される。しかしながら、クオーク模型の限界であることも捨てきれないため、今後は第一原理計算である格子QCDによる計算との比較・検討しながら共同研究を進める必要があるという結論に至った。この研究業績は、初めての分担者同士の分野横断的な共同研究であり、Physics Letters Bに掲載された。また、2019年3月に大阪大学RCNPにおいて大学院生を対象としてスクールを開催し、上記の研究業績も含めて成果発信を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、分担者内においての分野横断的な共同研究を行うことを主な目的としていた。まずは、ハドロン間での共同研究を開始し、掲載論文を掲載したことは大きな業績である。また、実験との共同研究に視野を入れ始めた。こちらは2019年度の研究成果として研究を進める予定であり、こちらもおおむね順調に進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ハドロン分野においては、国際共同研究を視野に入れて、南京大学の大学院生との共同研究を行い、未発見のペンタクオークの理論的研究を行う予定である。また、第一原理計算である格子QCD理論によるハイペロン間相互作用を活用したハイパー核の第一原理計算を行う予定である。また、中性子過剰原子核において、近年ボロンアイソトープである19Bの17B-中性子間の散乱長が100fmくらいであると驚異的に長い散乱長を与えることが分かった。このことから、19B=17B+n+nという3体問題として、いわゆるエフィモフ状態があるのではないか、ということが分担者内で議論されている。これは、まさに、原子核ー冷却原子分野横断の研究である。この研究において、理論班とフランスにおける少数多体系物理の研究者との国際共同研究として2019年度に研究を開始する予定である。このように2019年度は、ハドロンー原子核、原子核ー冷却原子の横断的研究を推進する予定である。
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