本研究班では、シンギュラリティ現象を観察する手段として、(1)非侵襲生理機能イメージング法、および、(2)全細胞動態イメージング技術を開発してきた。最終年度に当たる2022年度は、主にアプリケーション展開のためのフィージビリティ調査を行った。 (1) 非侵襲生理機能イメージング法の開発:永井班から提供された種々の蛍光タンパク質、カルシウムセンサの可視域から近赤外域における光音響特性を調査した。特に可視域(500~550 nm付近)では光音響信号強度は高く、光音響用分子プローブとして有用であることを明らかにした。また、チューナルブレンズを用いた焦点域の自動調整機構を独自に開発し、可視光域から近赤外光域まで1波長につき最速で1平方ミリメートルを1 μm刻みで10秒で計測可能な光音響イメージングを実現し、生体模擬試料および固定した細胞を用い、その有用性を実証済である。さらに、マウス頭部の観察に適用するため、光音響イメージング装置の小型化を行い、こちらも生体模擬試料を用いその基本性能を確認した。 (2)-1全細胞動態イメージング技術の開発:主に開発してきた新型レーザーシート型顕微鏡システム、平行して開発してきた高速共焦点顕微鏡システムやインキュベータ型多光子顕微鏡システムを用いて、公募班から依頼されたサンプル、ホヤ初期胚の変態時におけるカルシウムシグナル伝達の全細胞追跡、ならびに、脳オルガノイドの長期(48時間)単細胞追跡など、を実施した。本研究期間で開発された技術が、様々なシンギュラリティ生物学研究に有用であることが示された。 (2)-2 新型レーザーシート型顕微鏡システムの改善として、1000nm超蛍光をレーザーシート顕微鏡の開発を行ってきた。顕微鏡システムは完成しているものの、依然として、化学標識の問題は解決できておらず、本項目については引き続き研究開発を続けていく。
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