研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05410
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
永井 健治 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (20311350)
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研究分担者 |
吉村 英哲 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (90464205)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | イメージング / 蛍光 / 発光 / 生理機能操作 |
研究実績の概要 |
本年度は、領域発足時より進めている各種可視化プローブおよび細胞操作ツールの開発を引き続き行い、その性能を評価し改良を進めた。また領域内での連携により研究・開発の促進に努めた。以下の1、2,3の課題を設定してそれぞれ行った。 1. 蛍光・化学発光による各種プローブ及び要素技術の開発: 組織や個体における1細胞機能を捉えるために、蛍光および化学発光を利用した細胞機能プローブの開発を行った。単離した色素タンパク質に対してアミノ酸変異を導入することで様々な吸収波長をもつ変異体を開発し、蛍光タンパク質との組み合わせによる新規蛍光プローブ開発への可能性を見出した。また化学発光を利用したプローブとして、アルツハイマー病の原因となるタウタンパク質の凝集を標的としたプローブを開発した。 2. 時空間トランススケール生体操作ツール群の創出: オプトジェネティクスでの利用において技術的優位性が確立されている青色光受容体を用いたツールの開発および解析を行った。具体的には光応答型PI3KとPIP3産生について画像定量化及び数理モデル化を実施した。また、タウタンパク質の凝集を標的として、光照射により誘導する分子ツールを開発した。 3. 領域内での連携による各開発: A03生物班や公募班と共同で可視化・操作用プローブの開発およびイメージングなどの技術支援を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. ハナガサクラゲより得られた色素タンパク質に対して、アミノ酸へのランダム変異を導入することで吸収波長などの変化が誘導された。オリジナルと変異体を組み合わせることで、プローブ開発により細胞内の複数の事象に対して同時に観察する目処が立った。 A03-1班との連携として、アルツハイマー病に見られるタウタンパク質凝集を検出する化学発光プローブおよび光操作ツールの開発を行った。化学発光プローブでは、前年度に考案、試作をした蛍光タンパク質との融合プローブについて、細胞内へ導入しその性能について詳細に評価した。 2. オプトジェネティクスでの利用において技術的優位性が確立されている青色光受容体を用いたツールの開発を行った。具体的にはタウタンパク質の凝集を標的として光照射により誘導する分子ツールを開発した。青色光受容体とタウタンパク質を組み合わせて、培養細胞中のタウタンパク質を光照射により凝集できるツールopto-tauを構築し、細胞内にて試験を行なった。 細胞内PIP3産生光操作系について、光応答型PI3KとPIP3産生の同時画像定量化を行なった。その結果より、光照射量および継続時間に対する光応答型PI3Kの活性およびPIP3産生量の数理モデル化を検討した。
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今後の研究の推進方策 |
色素タンパク質によるプローブ開発及び細胞内解析: 複数の色素タンパク質変異体を用いて、カルシウムイオンなど複数の標的についてプローブを開発する。実際に細胞内へ導入して顕微鏡下にて標的の変動を追跡する。 短波長励起蛍光タンパク質の開発:短波長励起により蛍光を発するGFP変異体を開発する。FRETペアとしての組み合わせを増加させることで、複数のFRETペアによるプローブの同時使用を実現する。 化学発光タンパク質によるタウ凝集プローブの開発:開発した化学発光プローブについて、タウ凝集を誘導するタウシードの添加により発光の変化を詳細に解析する。リン酸化検出プローブ、多波長化なども含めて最適なものを選択する。 時空間トランススケール生体操作ツールの開発とシンギュラリティ現象の操作法開発:タウタンパク質の凝集を標的として開発した、光照射により誘導する分子ツールを改良する。神経細胞へ導入した際の光依存的な凝集と、その進行性について評価する。 領域内での連携による開発:公募班にて開発を進めている長時間観察に適した化学発光基質について、当計画班が有している観察装置を用いて、細胞、動物個体それぞれへ発光基質を導入した際の性能を評価する。結果をフィードバックして改良の指針とする。
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