研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05411
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
城口 克之 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (00454059)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 一細胞解析 / バイオイメージング / シークエンシング / 深層学習 / 血液細胞 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
“シンギュラリティ生物学”の創生に向けて、本研究では、シンギュラリティ細胞やシンギュラリティ現象が起きる際の細胞の内部状態(遺伝子発現)はどうなっているのか? シンギュラリティ細胞が出現する時の最初の変化は何なのか? という問いに答えるための研究を行っている。具体的には、イメージングで特定した細胞を分取して網羅的遺伝子発現解析を行うシステムを開発し、領域内で開発する広視野顕微鏡に実装する。これにより、新学術領域内外の研究者が対象としているシンギュラリティ現象を解析して、シンギュラリティ細胞の分子マーカーを決定するとともに、シンギュラリティ現象をもたらすメカニズムを分子(遺伝子)レベルで理解することを目的としている。 本年度は、実際に1,000以上の培養細胞について観察・分取し、その後に網羅的遺伝子発現解析を実施した。細胞を適切にラベルすることにより、観察した細胞画像と網羅的遺伝子発現解析の結果を間違いなく対応できることが確認できた。また、マウスの血液細胞に対しても同様の実験を実施し、本システムが広い範囲の細胞種に応用できることを示すことができた。得られたデータに対して適切な深層学習のモデルとパラメータを選定することで、深層学習を用いて細胞画像から遺伝子発現状態を推定することができた。これは、網羅的な計測から得られる細胞の内部状態を、細胞を壊さずに知ることができる画期的な成果である。さらに、本手法を広視野顕微鏡に実装するため、細胞分取時の位置制御などのシステムを改良した。細胞分取における共同研究も実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニードルの位置を適切に操作することで、タイムラプス撮影した細胞を分取し、細胞の動態と遺伝子発現解析をリンクすることが出来た。さらに、システムの応用例を示すために、マウスのプライマリ細胞での計測を実施した。適切な深層学習のモデルを選定し、パラメータも検討した結果、細胞画像から遺伝子発現状態を推定することが出来ている。また、ニードルの形状や操作の条件を検討し、細胞の真上からニードルをアクセスさせることなどにより、より密度の高い条件から細胞を分取することが可能になった。 ニードルを広い範囲で操作できるソフトウェアを構築した。今後、AMATERASへ実装する。 共同研究の依頼があり、細胞の分取条件を検討し、細胞の調製法や染色条件などについてフィードバックを行った。
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今後の研究の推進方策 |
細胞の内部状態の推定:顕微鏡イメージングで同定・分取した細胞の遺伝子発現を解析するシステムを用いて、遺伝子発現状態がどの程度異なった場合に、その違いを細胞画像から推定できるかを評価する。細胞画像から個々の遺伝子の発現量がどの程度推定できるかを評価する。セルライン、マウスのプライマリ細胞において、細胞画像から遺伝子発現状態を推定した結果をまとめて論文を投稿する。 細胞分取システムの改良とAMATERASへの実装:広範囲にニードルを操作できるようにしたデバイスをAMATERASに実装し、AMATERASで観察した細胞を分取する。 領域内外でのサンプル解析における連携: 領域内外の共同研究者から依頼があるため、持ち込まれるサンプルの計測、解析を継続して実施していく。
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