“シンギュラリティ生物学”の創生に向けて、本研究では、シンギュラリティ細胞やシンギュラリティ現象が起きる際の細胞の内部状態(遺伝子発現)はどうなっているのか? シンギュラリティ細胞が出現する時の最初の変化は何なのか? という問いに答えるための研究を行ってきた。これまでに、顕微鏡観察で特定した目的細胞を自動で分取する装置を開発し、分取した細胞の網羅的遺伝子発現解析を実現してきた。 本年度は、同一細胞から得られた細胞画像と網羅的遺伝子発現データを対象に、深層学習を用いて細胞画像から細胞状態を推定する時、遺伝子発現状態がどの程度異なった場合に、その違いを細胞画像から推定できるかを評価した。また、細胞画像から個々の遺伝子の発現量がどの程度推定できるかも検討した。昨年度以前の成果も含めてこれらをまとめ、国際一流紙に発表した。 広い視野内に存在する細胞を効率よく分取できるように、ニードルの操作や可動域などを含めて本システムを改良し、領域で開発した広視野顕微鏡と統合した。これにより、たくさんの細胞の中に存在する稀な(特徴的な)細胞を検出、分取することができている。また、領域内の研究者が“シンギュラリティ現象”を見出しているサンプルに対して本細胞分取システムを適用できるように改良を加え、“シンギュラリティ現象”に関連する目的細胞の分取と、分取した細胞の網羅的遺伝子発現解析を実施した。シンポジウムなどでの発表を機会にお声がけ頂いた領域外の方々とも、ここで開発したシステムを用いた共同研究を開始している。
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