研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05412
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
大浪 修一 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (50348843)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | バイオイメージ・インフォマティクス / データプラットフォーム / 深層学習 / ビッグデータ / データ統合 |
研究実績の概要 |
1.シンギュラリティ細胞を同定するインフォマティクス技術の開発 「1-1. オブジェクト認識依存型のシンギュラリティ細胞同定法の開発」として、A03-2堀川班の粘菌、およびA03-4岡崎班のT細胞の遊走の2次元タイムラプス蛍光顕微鏡画像に対して、細胞の移動を自動計測するソフトウェアを開発した。更に、これらの計測データを用いた粘菌/T細胞の動態解析の解析戦略について議論した。また、様々な分化状態の細胞の間で、細胞核や細胞膜の動態の類似度を評価し、類似度の高い細胞をクラスタ化する手法を開発し、発生中の線虫胚の細胞の動態に対する隣り合う細胞からの相互作用を明らかにした。「1-2. オブジェクト認識非依存型のシンギュラリティ細胞同定法の開発」として、AMATERASプロトタイプ機で取得したA03-2堀川班の粘菌遊走の2次元タイムラプス蛍光顕微鏡画像に適用する手法を検討した。また、老化に伴う卵母細部の細胞質の外観の変化を検出する画像認識手法を開発した。 2.シンギュラリティ生物学のためのデータプラットフォームの開発 「2-1. データ保管プラットフォームの開発」として、各班が独自に、あるいはAMATERASプロトタイプ機を用いて取得したオリジナルデータおよびそれらのメタ情報を、班単位・研究課題単位・実験単位等で管理・運用するための1.0ペタバイトのネットワークストレージシステムを開発した。「2-2. データ活用プラットフォームの開発」として、顕微鏡画像管理システムOMEROを導入し、多数のオリジナル画像データをダウンロードすることなくネットワーク・www経由で可視化できるようにした。また、メタデータの利活用を可能にするシステムを開発した。更に、認識した生命科学オブジェクトの動態の高速かつ効率的な解析を可能にするデータフォーマットBD5をHDF5をベースに開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、「1.シンギュラリティ細胞を同定するインフォマティクス技術の開発」に関しては、A03生物班が対象とする複数の細胞種に対する自動認識ソフトウェアの開発が順調に進んでおり、プロトタイプ版の活用が始まっている。また、これらのソフトウェアを用いて計測したデータを用いた解析方法に関しても詳細な議論が進んでおり、A03生物班との共同研究が順調に進んでいる。 「2.シンギュラリティ生物学のためのデータプラットフォームの開発」に関しても、当初の計画のとおり、領域全体で研究データを共有し利活用するデータプラットフォームの初期版の構築は完了しており、計画班とAMATERASプロトタイプ機利用者を中心に実際の活用が始まっている。また、画像認識により定量化した生命動態データを高速かつ効率的に取り扱うデータフォーマットBD5の開発に成功した。 これらの理由から、当研究課題はおおむね順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り研究開発を進める。2020年度については下記を進める。 1.シンギュラリティ細胞を同定するインフォマティクス技術の開発: 「1-1.オブジェクト認識依存型のシンギュラリティ細胞同定法の開発」としては、引き続きA03-2堀川班の粘菌、およびA03-4岡崎班のT細胞の遊走の2次元タイムラプス顕微鏡画像に対する自動計測ソフトウェアの開発を継続する。更に、これらの計測データを用いた粘菌/T細胞のシンギュラリティ現象の解明を、A03-2堀川班、A03-4岡崎班と協力して進める。また、公募班も含めたその他の研究対象について、細胞自動認識ソフトウェアの開発を開始する。「1-2.オブジェクト認識非依存型のシンギュラリティ細胞同定法の開発」としては、引き続き、AMATERASプロトタイプ機で取得したA03-2堀川班の粘菌遊走の2次元タイムラプス顕微鏡画像を対象に手法の開発を継続する。また、公募班も含めたその他の班の研究対象について、オブジェクト認識被依存型手法の適用可能性について検討する。 2.シンギュラリティ生物学のためのデータプラットフォームの開発: 「2-1.データ保管プラットフォームの開発」としては、画像データ、メタデータに加えて、各班が生産する細胞特徴量データ、1細胞網羅的遺伝子発現解析データ、外部の公開データを統合的に管理するシステムを導入する。「2-2.データ活用プラットフォームの開発」としては、SSBDデータベースで得られた定量データの表現・可視化技術を用いて、ROIデータ、細胞特徴量データ、1細胞網羅的遺伝子発現解析データなどを迅速かつ容易に可視化、解析可能なシステムを開発する。 3.シンギュラリティ現象を解析するインフォマティクス技術の開発: 取得したデータより個々の現象の発現に関する因果関係ネットワークを推定し、推定結果を用いて目的のシンギュラリティ現象を解明する。
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