研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05413
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小松崎 民樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30270549)
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研究分担者 |
中村 篤祥 北海道大学, 情報科学研究院, 准教授 (50344487)
小野 峻佑 東京工業大学, 情報理工学院, 准教授 (60752269)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 情報計測 / バンディットアルゴリズム / 因果推論 / 1細胞ラマン分光 / スパース学習 |
研究実績の概要 |
単細胞生物でコロニーを形成するアメーバDictyostelium discoideum(Dicty)を例に、その離合集散のダイナミクスに隠れている因果関係(リーダーおよびフォロワー細胞の役割分化)を見積もる方法論を開発した。あらかじめリーダー、フォロワー細胞を事前に設定した改良Vicsekモデルに基づく細胞動態シミュレーションの軌跡データ集合から、移動エントロピー、固有情報量、共有情報量、シナジー情報量を用いた因果解析により背後の相互作用距離およびリーダー・フォロワー細胞を同定するデータ解析手法を新規に開発した。さらに、阪大産研永井教授と徳島大学堀川一樹教授らによるcAMPプローブを用いたDicty細胞の離合集散の画像ファイルから抜き出された10コ程度のCAMPパルス列から、速度ベクトル場を粗視化することで、cAMPの濃度場や細胞の個々の運動を個々に並列して追跡できることを見出した。その理論的検証を展開し、cAMPのパルスパターンからシンギュラリティ現象を定量、探索する。 細胞毎の発火状態時系列から伝搬時差推定をアライメントベースで行い伝搬グラフを構築する手法を開発した。また、シンギュラリティ現象が起こる前にリーダーやフォロワーの推定が可能であるかを評価する特徴量の迅速抽出をめざし、バンディット手法を用いたモンテカルロ木探索による識別規則の迅速探索法を開発した。 スパース性を始めとする様々な事前知識を取り入れることで,定常成分・シンギュラリティ成分・ノイズや外乱を同時に分離しながら推定するための数理モデルを定式化した。実際のデータを用いてシンギュラリティ現象の抽出が可能化どうか検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
論文(Mach. Learn.2020、J. Phys. Chem. B., 2019, FEBS Lett. 2019(表紙カバー、Editor’s Choiceに選出)、情報系学会プロシーディング(SDM2019 ICIP2019,ICASSP2019)などコンスタントな研究成果を出すことができている。理論的整備が完了したため、今後、領域内連携を加速する。
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今後の研究の推進方策 |
リーダー・フォロワーの因果律の検証ならびに相互作用領域の新規推定手法を継続開発し、より多体系の相互作用様式を理解するため、移動エントロピーの物理的成因を解明すべく情報理論的分解を検討する。A03-2班から入手した細胞性粘菌のマルチスケールイメージング画像ムービーに適用するとともに、実データに対するリーダー・フォロワー検定とその動態を解析する。開発した伝搬グラフを構築する手法を拡張し、位置などの他の情報や発火の度合いなどより詳細な情報を扱えるようにし、予測精度の向上を図る。定常成分・シンギュラリティ成分・ノイズや外乱を同時に分離しながら推定するための数理モデルの定式化を継続し、それを最適化するためのアルゴリズムを開発する.また,理論解析を行い,収束条件・レート等を導出する.加えて,シミュレーションによって理論解析結果との整合性を評価する。
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