計画研究
研究分担者・高島、研究協力者・添田らのタウオリゴマー構造の知見に基づき、タウオリゴマーの誕生を高感度で検出できる高光度化学発光性プローブと、光依存的にタウの凝集を引き起こすことができるタウ操作ツールを、永井班と共同で開発した。プローブは、凝集時のタウに生じる立体構造変化により、C端とN端に分割した発光酵素Akalucが再構成し活性を持つデザインとした。HEK293T細胞において候補のスクリーニングを行ったところ、タウの凝集が加速するリン酸化状態において発光強度が増加するプロトタイプが見出された。また、永井班研究分担者・吉村は、CRY2が青色光依存的にオリゴマーを作る性質を利用したタウ操作ツールをデザインした。研究協力者・添田はCOS7を用いたスクリーニンング実験により、青色光依存的に凝集体をつくるプロトタイプを見出した。これにより、タウの凝集を可視化・操作できる可能性が示された。研究分担者(廣島)は、人工知能を活用した全自動1分子イメージングシステムAiSISを用いて(、膜分子の動態から受容体の多量体形成などの状態変化を特定する技術を確立した。研究代表者(坂内)は神経細胞を用いて、従来の1分子イメージング法に改良を加えて、神経細胞膜上のタンパク質・脂質の動態データを網羅的に取得する技術を確立し、分子動態の解析やパラメータの可視化の機能を強化した。上記の技術を用いて、生後2ヶ月という早期にアミロイドβ (Aβ)の蓄積を起こすアルツハイマー病モデルマウスの神経細胞の解析を行い、「Aβの蓄積」という表現系よりも早い時期に培養神経細胞に現れる「膜分子動態異常」を検出できることを示した(未発表)。さらにAiSIS装置で解析可能なタウ伝播モデルとして、研究分担者・高島の研究室で作成されたタウ過剰発現Neuro2A細胞を選定した。これによりタウ伝播の分子機構を解明する体制が整った。
2: おおむね順調に進展している
最初に着手したタウ欠損細胞(ネガティブコントロール)の膜分子動態が当初の予想に反し大きな影響を受けていることが判明した。研究遂行上、この現象の本質を見極めることが不可欠であることから、タウノックアウト細胞に各種タウミューテーションのレスキュー実験を行う必要が生じたため、そちらの研究を優先的に行う必要があった。このような当初予期していないことがおこったとはいえ、本研究の鍵となるタウのインディケーターのプロトタイプを見出すことができた。また、青色光によりタウの凝集をコントロールするツールを開発する過程で、凝集に必要なタウの配列が思いもかけないところにあることが見出された。この点は当初予期せぬ思わぬ新しい発見である。ハイスループット化に向けた大規模1分子イメージングシステムも、順調にアップデートされている。以上のことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
A01-2班が作成したプロトタイプのタウオリゴマープローブを改変し、マウス個体で使えるタウオリゴマー検出プローブを開発する。個体深部イメージングのための光音響プローブ開発に永井班が成功した際には、発光するプローブだけでなく、光音響タウオリゴマープローブも作成する。マウス個体投与に向けて、プローブ発現用のAAVベクターの作成、プローブを全脳にノックインしたトランスジェニックマウスの作成を行う。タウの変性と伝播が確認されているアルツハイマー病モデルマウス(Yoshiyama et al. 2007 Neuron 53: 337-51, P301S変異ヒトタウ遺伝子導入マウスPS19等、国内で入手可能)に、開発したプローブをAAVベクターで導入し、プロトタイプAMATERASであり、マウス全脳を高速でサブ細胞分解能で解析することができるFAST(Seiriki et al., 2017 Neuron 94: 1085-1100)を用いて、固定した全脳でタウオリゴマーを総括班と共同で検出する。生後から様々な月齢のマウス個体青斑核でタウオリゴマーを蓄積・放出能を獲得する最初の神経細胞を同定し、シンギュラリティ細胞は青斑核にいつ誕生するのか?という問いに答える。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 2件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 6件、 招待講演 16件) 図書 (1件)
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