研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05414
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂内 博子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40332340)
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研究分担者 |
廣島 通夫 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 上級研究員 (20392087)
高島 明彦 学習院大学, 理学部, 教授 (00154774)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / タウ / 脳神経疾患 / イメージング / シンギュラリティ生物学 |
研究実績の概要 |
分担者・高島、研究協力者・添田のタウオリゴマー構造の知見に基づき、永井班と共同で、タウオリゴマーの誕生を高感度で検出できる高光度化学発光性プローブと、光依存的にタウの凝集を引き起こすことができるタウ操作ツールを開発した。凝集時のタウに生じる立体構造変化により、C端とN端に分割した発光酵素が再構成し活性を持つ設計でプローブをデザインしたところ、タウの凝集が加速するリン酸化状態において発光強度が増加するプロトタイプが見出された。また、永井班研究分担者・吉村は、青色光依存的にオリゴマーを作るタウ操作ツールをデザインした。研究協力者・添田はスクリーニング実験により、青色光依存的に凝集体をつくるプロトタイプを見出した。これにより、タウの凝集を可視化、および人工的に操作できる可能性が示された。
研究分担者(廣島)は、人工知能を活用した全自動1分子イメージングシステムAiSISを用いて、膜分子の動態から受容体の多量体形成などの状態変化を特定する技術を確立した。研究代表者(坂内)は神経細胞を用いて、従来の1分子イメージング法に改良を加えて、神経細胞膜上のタンパク質・脂質の動態データを網羅的に取得する技術を確立し、分子動態の解析やパラメータの可視化の機能を強化した。さらにAiSIS装置で解析可能なタウ伝播モデルとして、研究分担者・高島の研究室で作成したタウ過剰発現細胞を選定した。これによりタウ伝播の分子機構を解明する体制が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
A01-2班との共同研究により、タウオリゴマー検出プローブのプロトタイプが一通り完成し、それをスクリーニングするアッセイ系が確立した。また、A01-2班との共同で、人為的にタウ凝集を誘導する実験系も確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
A01-2班が作成したプロトタイプのタウオリゴマープローブを改変し、マウス個体で使えるタウオリゴマー検出プローブを開発する。タウの変性と伝播が確認されているアルツハイマー病モデルマウス(Yoshiyama et al. 2007 Neuron 53: 337-51, P301S変異ヒトタウ遺伝子導入マウスPS19等、国内で入手可能)に、開発したプローブをAAVベクターで導入し、固定した全脳でタウオリゴマーを総括班と共同で検出する。生後から様々な月齢のマウス個体青斑核でタウオリゴマーを蓄積・放出能を獲得する最初の神経細胞を同定し、シンギュラリティ細胞は青斑核にいつ誕生するのか?という問いに答える。
タウPETイメージングの専門家である公募班の佐原成彦博士、また研究協力者として参画した松本弦博士が開発したタウ凝集モデル細胞を用いて、総括班が構築したAMATERASを用いて凝集タウが伝播する過程を観察し、タウ伝播の分子機構に関する知見を蓄積していく。
プローブで可視化されたシンギュラリティ細胞と周辺の細胞における遺伝子発現を城口班と共同で解析し、シンギュラリティ細胞を特徴づける遺伝子を同定し、シンギュラリティ現象を操作する手がかりを得る。研究代表者は、城口班が開発する細胞分取システムで、in vitroタウ伝播モデル系を最適化する。分取したシンギュラリティ細胞および周辺細胞のRNA sequencingを行い、シンギュラリティ細胞に特徴的な遺伝子発現プロファイルを得る。
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