研究領域 | シンギュラリティ生物学 |
研究課題/領域番号 |
18H05415
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
堀川 一樹 徳島大学, 先端研究推進センター, 教授 (70420247)
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研究分担者 |
竹本 龍也 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (30443899)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 自己組織化 / 生物物理 / cAMP / ゲノム編集 / 細胞周期 |
研究実績の概要 |
社会性アメーバ集団がcAMPパルスを臨界成長させる系ではcAMPパルスを開始するリーダー細胞(シンギュラリティ細胞)とその信号を増幅成長させるフォロアー細胞(シンギュラリティ機構)が見出される。集団内で1%程度のリーダー細胞が全体の信号伝達動態を左右することを検証するには数万細胞の信号動態をAMATERASで低侵襲イメージングしリーダー細胞とフォロアー細胞、これらに従属的なシチズン細胞の集団内組成を任意に再構成し臨界に与える影響をアッセイする社会操作実験を行う必要がある。令和元年度は総括班主体でAMATERAS開発を行いcAMP信号動態の大規模計測を実施した。サンプルダメージを最小化する装置最適化、cAMP信号を定量化する試料最適化、巨大データ(1Tバイト/観察)の領域内共有と解析の効率化を完了。10万細胞/視野のcAMP信号動態を30秒毎に10時間計測する体制を構築した。社会操作実験の一部であるパルス動態リセット実験ではリーダー細胞とフォロアー細胞が協調して形成するメゾスケールに構造化された発火能力の空間ヘテロ性が螺旋信号波の自己組織化に必須であると見出した。平成30年度来の課題であった光変換型ツール開発としてリーダー細胞を識別する超高感度Ca2+指示薬を開発。リーダー細胞の検出にはCa2+親和性を高度に有する指示薬が必要なため既存のCAMPARIを改良しKd=25nMの高親和性型CAMPARIを開発、成果の一部を学会発表した。ゲノム編集によるメモリーモジュールの開発、split型Cas9とG1/G0期に安定化させるCdt1、S/G2/M期で安定化させるGeminin1との融合タンパク質とを連結した融合タンパク質の発現、細胞周期と連動してCas9酵素が活性化されるシステムを構築した。split型Cas9の再構成がラパマイシンに依存する系と依存しない系も構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本領域の研究を推進できるかどうかは総括班が開発するAMATERASを起点とした強固な領域内連携の成立にかかっている。現在までにその根幹であるAMATERASの装置開発を終え、10万細胞/視野を30秒毎に10時間にわたって撮影することを実現し、それにより取得した詳細なデータを領域内で共有/解析する体制を整えた。これらの実現のためには様々な技術的な問題を着実に解決することが必要であったためサンプルへのダメージの軽減するための試料ならびに装置の最適化と巨大データの共有/解析の効率化に想定以上の時間を要したが、元来の装置の改良やデータ共有環境の整備を完了させ今後の領域内連携の基盤整備を終えることができたことは本研究にとって大きな進捗である。またSplit型Cas9と細胞周期と連動して安定化・不安定化されるタンパク質とを連結させた融合タンパク質発現系が構築でき、現在は細胞分裂ごとに異なるゲノム編集を引き起こすメモリーレポーターシステムの構築に取り掛かっている。これらの成果から研究は「おおむね順調」と判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今後は各計画班との連携を更に強化して実験計画を遂行する。永井班と共同で超高感度CaMPARIの機能向上を図る。また城口班ならびに総括班と共同で1細胞ピックアップ装置をAMATERASに実装し、リーダー細胞の回収分析を行いその分子特徴を解析する。取得される画像データを大浪班や小松崎班と共有し、因果律解析を継続して行う。あわせて分科会を開催し公募班を含めたAMTERASの共同利用を促進させる。細胞分裂回数のメモリーモジュールの開発を堀川班および研究分担の竹本らと継続して行う。
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