研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
18H05422
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
宍戸 厚 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40334536)
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研究分担者 |
赤松 範久 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (50806734)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 光機能 / 高分子 / 液晶 / 発動分子 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,時空間的に強度が変調した光による新しいエネルギー変換プロセスを開拓する。自然界に学び動く光を利用することで異方性分子を配向したフィルムを作製することができれば,優れた光学機能を有するフィルムデバイスを実現できる。中でも,二次元分子配向パターニングは材料に新たな光学機能を付与する上で非常に重要である。二次元分子配向は一般的に光配向法で形成されており,光応答性分子を用いることで偏光方向に沿った分子配向を誘起することができる。一方で,偏光や光応答分子を必要とせず,光重合に伴い発生する物質移動に基づく新たな分子配向法を開発している。この手法では,光の形状や動きを設計することで様々な分子配向を一段階で誘起できる利点がある。 本年度は,パターン光を用いて微細かつアレイ状の放射状分子配向フィルムを作製し,光学機能の評価を行った。アクリレートモノマーと架橋剤を混合した後,紫外領域に吸収をもつ光重合開始剤を添加し,重合用試料とした。この試料をガラスセルに封入し,照射パターンを自由に設計することが可能なプロジェクターを用いて光重合を行った結果,放射状分子配向がアレイ状に集積したフィルムの作製に成功した。さらに,作製したフィルムに波長633 nmのHe-Neレーザー光を入射すると,軸対称偏光ビームが多数同時に発振することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の通り,光の形状を設計することでアレイ状に集積した放射状分子配向の作製に成功した。ベクトルビームを多数同時に発振する光機能を有することも明らかになりつつある。このような,放射状の分子配向をもつ液晶材料は入射した直線偏光レーザー光を軸対称偏光ビームに変換することが知られており,超解像イメージングやナノ加工の分野で鍵技術となり得る。
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今後の研究の推進方策 |
光重合過程における分子の動きと配向を利用した表面凹凸構造体の形成やその外部刺激による応答機能を調べることで,より詳細に本光重合法のメカニズムを解明する。また,力学刺激によるフィルムの巨視的変形を分子の動きや配向変化を可視化することで,作製したフィルムの力学応答定量解析についても検討を進める。
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