研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
18H05423
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
角五 彰 京都大学, 理学研究科, 教授 (10374224)
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研究分担者 |
景山 義之 北海道大学, 理学研究院, 助教 (90447326)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 生体発動分子 / 人工発動分子 / 集団運動 / 自律機能 |
研究実績の概要 |
生体分子モーターは優れた運動効率、高い比出力を備えた生体由来の発動分子(生体発動分子)である。この発動分子を動力源としたアクチュエーターの開発が各国で盛んに行われている。しかし、依然として実用化への道のりは遠いのが現状である。その理由として発動分子の決定論的な動作が保障されていない、耐久性や熱安定性が低い、ダイナミクスを制御・操作する技術が確立されていないなどの要因がある。そこで本研究では生体分子モーターに人工修飾を加えたハイブリッド型生体発動分子を創出・集積し、集団で機能するエネルギー変換素子の創成を目指す。併せて人工の発動分子の集団エネルギー変換系の構築に取り組み、時空間的階層性を有した分子運動系の基礎学理構築を目指す。本研究では、1)二次元界面を足場とした生体発動分子の運動発現系の確立、2)生体発動分子の集団運動発現系の確立、3)生体発動分子による物質輸送システムを確立することで標的物質を集団で輸送し機能的な組織体へと組み上げる集積場を提供する。さらに得られた知見をもとに4)人工分子による自律集団運動を実現することを目的としている。 本年度は、班内連携を行いながらハイブリッド分子の創出、分子ダイナミクスのリアルタイムにイメージングを行うとともに、挙動の動力学的な解釈を行なった。人工発動分子の集団化によるエネルギー変換系の学理構築に向けた取り組みでは、実現した物体遊走システムについて、液晶の種類を変えた場合の挙動、発動分子の濃度を変えた場合の挙動を観測した。このことから、発動分子の働きで物体の遊走が起きていることは推測された一方、遊走速度についてはばらつきが大きく、定量的な議論をするための方法の開発が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハイブリッド分子の創出に関しては、計画していた分子ダイナミクスのリアルタイムにイメージングおよび挙動の動力学的な解釈まで進められており、また人工発動分子の集団化によるエネルギー変換系の学理構築に向けた取り組みでは、液晶の種類を変えた場合の挙動、発動分子の濃度を変えた場合の挙動の観測まで終えていることから概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
生体分子モーターは優れた運動効率、高い比出力を備えた生体由来の発動分子(生体発動分子)である。この発動分子を動力源としたアクチュエーターの開発が各国で盛んに行われている。しかし、依然として実用化への道のりは遠いのが現状である。その理由として発動分子の決定論的な動作が保障されていない、耐久性や熱安定性が低い、ダイナミクスを制御・操作する技術が確立されていないなどの要因がある。そこで本研究では生体分子モーターに人工修飾を加えたハイブリッド型生体発動分子を創出・集積し、集団で機能するエネルギー変換素子の創成を目指す。併せて人工の発動分子の集団エネルギー変換系の構築に取り組み、時空間的階層性を有した分子運動系の基礎学理構築を目指す。 次年度は、今年度までに創出したハイブリッド分子を用いて、目的物質をドラッグ&ドロップする方法論を確立することを目指す。さらに不均一な反応場環境の構築により、位置選択的な物質運搬・輸送システムの構築に向けた研究にも着手する。人工発動分子の集団化によるエネルギー変換系の学理構築に向けた取り組みでは、今年度までに実現した微粒子のゆっくりとした受動遊走についてさらなる運動解析を進め、発動分子が巨視的な仕事を実現する仕組みについて、より明確な仮説を打ち立てる。また、遊走速度に大きなばらつきが生じる理由について、顕微蛍光X線分光法などを用いて明確にするなど、現象の総合的理解に向けた取り組みを開始する。
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