研究領域 | 発動分子科学:エネルギー変換が拓く自律的機能の設計 |
研究課題/領域番号 |
18H05424
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
飯野 亮太 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 教授 (70403003)
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研究分担者 |
笠井 倫志 岐阜大学, 糖鎖生命コア研究所, 特任准教授 (20447949)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 1分子計測 / 分子モーター / 1分子イメージング |
研究実績の概要 |
(1) 金属ナノプローブ1分子計測法の開発:タンパク質多量体化モチーフSpycatcher/Spytagシステムを用い、2量体、3量体、4量体、6量体の非天然型キネシンを作製し、1分子計測を用いて運動速度と運動距離を詳細に調べた。その結果、非天然型キネシンは運動速度が野生型に比べ大幅に低下する一方、3量体以上では運動距離が野生型よりも大幅に増加することを明らかにした。また、非天然型2量体、3量体の直進運動の素過程(運動時の一過的な停止と運動ステップ)を可視化して停止時間の分布やステップサイズの分布を解析した。さらに、A01-1班と連携し、蛍光色素IC3や金属ナノプローブ結合用ビオチンを導入した人工分子PEGを用いて2量体化した生体・人工ハイブリッドキネシンを作製した。 (2) 金属ナノプローブと蛍光の1分子複合計測:回転速度が低い変異体に加えて回転速度が高い野生型V-ATPaseの回転運動の素過程(ATP結合待ちおよびNaイオン結合待ちの一過的な停止と運動ステップ)を可視化した。これにより、V-ATPaseの2つの回転分子モーターは硬くつながって連動することで、構造対称性(V1は3回対称性、Voは10回対称)のミスマッチの存在下でスムースに回転することを解明した。また、複合計測によるイオン輸送の素過程の可視化に取り組むため、フェムトリッターチャンバーアレイの作製に取り組み確立した。 (3) 蛍光複合計測による1分子動態観察:A01-1班が新規に合成した膜型人工高分子の作動メカニズムを解明するため、ガラス基板上に作製した脂質二重層膜中での膜型人工高分子の蛍光1分子イメージングを行い、一過的な2量体形成を観察することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1) 金属ナノプローブ1分子計測法の開発:多量体化タンパク質モチーフを用いた2量体、3量体、4量体、6量体の非天然型キネシンの作製、および人工分子PEGを用いて2量体化した生体・人工ハイブリッドキネシンの作製に成功した。 (2) 金属ナノプローブと蛍光の1分子複合計測:V-ATPase変異体および野生型の高速高精度1分子計測に成功し、Voモーターのイオン輸送が律速となる回転の可視化に初めて成功した。さらに、V1モーターのATP結合待ちの停止角度とVoモーターのNaイオン結合待ちの停止角度が異なることを明らかにし、2つの回転モーターが硬くつながり連動して機能することを明らかにした。 (3) 蛍光複合計測による1分子動態観察:ガラス基板支持脂質二重膜への膜型人工高分子の再構成と蛍光1分子イメージングに成功し、イオン透過と関連すると考えられる一過的な2量体形成を検出することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 金属ナノプローブ1分子計測法の開発:金ナノ粒子をプローブに用いた非天然型キネシンの高速高精度1分子計測を行ってその運動素過程を明らかにし、モータードメイン間の協調性の有無や協調の機構を解明する。 (2) 金属ナノプローブと蛍光の1分子複合計測:V-ATPaseを再構成した人工脂質膜小胞(リポソーム)やフェムトリッター人工膜チャンバーアレイを用い、イオン輸送の計測を行う。さらに、非天然型V-ATPaseを作製し、輸送イオンの選択性の改変やイオン/ATP比の改変に取り組む。 (3) 蛍光複合計測による1分子動態観察:発動分子の作動メカニズムを解明するため、人工発動分子として引き続き、A01-1班が作製した新規の膜型人工高分子の多量体形成のダイナミクスを詳しく調べる。また、生体発動分子として、C01-2班が作製した変異GPCRを扱い、GPCRの活性化を1分子レベルで定量するプローブの開発と、それを用いた活性測定に取り組む。
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