計画研究
本計画班は、研究対象となる発動分子の物理化学的性質と立体構造情報を明らかにすることで、発動分子を合理設計・理論計算するための物理化学評価と構造基盤を確立し、「発動分子科学」の創成・発展に貢献することを目的としている。以下に当該年度に得られた研究成果の概要を記載した。(1)発動分子の物理化学解析(長門石が担当):本年度は、代表者(村田)らが創出した光駆動性生体発動分子の耐熱化変異体に関して、DSC測定による熱安定解析を行った。その結果、変性中点温度が最大で7度上昇(Tm = 100度)した光駆動性生体発動分子を同定した。さらにDSCのピーク形状より、この変異体はタンパク質のフォールディングに関するパッキングも強化されていることが明らかとなった。(2)理論的耐熱化変異体作製技術の開発(村田が担当):本年度は、回転型生体発動分子に対する理論的耐熱化変異体予測法の開発を行った。具体的には、サブユニット間相互作用面に対するアミノ酸置換体の構造予測方法の検討と理論計算のエネルギー項の最適化を行った。そして、高い活性を保持した耐熱化変異体の創出に成功した。(3)生体発動分子の耐熱化と構造解析(村田が担当):(2)で得られた耐熱化変異体のX線結晶構造を決定し、合理的設計の基盤を確立した。これらの構造情報からA01, C01班と共同で創出した超機能化V型回転分子モーターについても結晶構造解析による設計の検証を行った。(4)人工およびハイブリッド発動分子の構造解析(村田が担当):光駆動型ハイブリッド発動分子について、LCP法を用いた結晶化スクリーニングを行い、微結晶を得た。今後はX線結晶構造解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通り、(1)前年度の研究で得られた光駆動性生体発動分子変異体の変性中点温度の同定、(2)回転型生体発動分子の耐熱化変異体の創出、(3)得られた耐熱化変異体のX線結晶構造決定、(4)光駆動型ハイブリッド発動分子の結晶化に成功した。このため予定通り順調に進展していると考えている。
当初計画に従って、各研究項目を継続する。そしてA01班やB01班、公募班と連携し、各種発動分子を合理設計・理論計算するための物理化学評価と構造基盤の確立を目指す。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (34件) (うち国際学会 5件、 招待講演 11件)
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