研究実績の概要 |
精神病態の分子基盤解明を可能にする次世代トランスオミクス技術の一環として、動的な代謝流束変化を数理モデルにより予測する新規トランスオミクス解析手法を開発した。培養細胞から得たリン酸化プロテオームデータおよび炭素13標識メタボロームデータを用いて、非定常状態における代謝流束の経時的変動を予測することに成功した(Quek et al. 2020 iScience)。また、トランスオミクス解析の背景にある考え方をシステム生物学の立場から解説する総説を発表した(Yugi et al. 2019 Curr. Opin. Syst. Biol.)。当該総説では、各階層の分子の量のみならずむしろその合成・分解の速度や、各オミクス階層の反応速度論的構造に立脚して因果推論を行うことが多階層ネットワーク再構築の本質であることを論じた。さらにin vivo実験への適用可能性を立証するため、グルコースを経口投与したマウスの肝臓からメタボローム、トランスクリプトーム、シグナル分子のリン酸化(Western blot)の時系列データを取得し、リン酸化、トランスクリプトーム、メタボロームの3つのオミクス階層にまたがる多階層代謝制御ネットワークを再構築することに成功した(Kokaji et al. bioRxiv)。また、2018年に論文発表した、ラット肝がん由来Fao細胞におけるインスリン濃度に依存して異なる階層縦断的調節経路を使い分けていることを発見した成果 (†Kawata, †Hatano, †Yugi et al. 2018 iScience) について、国際システム生物学会(於 沖縄科学技術大学院大学)にて口頭発表した。
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