研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H05432
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
豊泉 太郎 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (50547461)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 意思決定 / 報酬予測誤差 / 順列的神経活動パターン |
研究実績の概要 |
人や動物の意思決定は報酬やリスクに応じて変化することが分かっている。そして、このような意思決定は精神疾患やストレスとも関連することが指摘されている。しかし、特に選択肢の優劣があまり明確ではない状況において、脳科学的に観測されている生物要素が意志決定にどのように寄与しているかは未解決な問題である。本研究では、報酬やリスクが意思決定に及ぼす影響を数理モデルを用いて解析し、これらの要素が及ぼす影響を理解することを目的とする。
これまでの神経科学および経済学の研究で、ヒトや動物ではしばしば一見すると非合理的な行動を取ることが報告されている。そのような行動の例は経済学におけるパラドックスやギャンブル性の行動としてこれまでに報告されてきた。しかし、それらの非合理的な行動を統一的に説明する理論的な枠組みは十分に整っていない。本年は、各行動のリスクを意志決定時にどのような手続きで見積もったら非合理的と考えられている行動を良く説明できるかを研究した。脳科学の実験的知見から、ドーパミン細胞の示す報酬予測誤差および海馬などの神経細胞が示す順列的活動パターンが意思決定に関わっていると考えられている。それらの信号を統合して評価し、意思決定を行う数理モデルを構築した。その結果、これまでのプロスペクト理論によれば、主観的確率表現や問題の簡略化に頼って理解していた意思決定を、問題の構造を変えずに客観的確率だけを用いて説明することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
順列的に生成される報酬予測誤差を統合する数理モデルを考案し、そのモデルによってプロスペクト理論が扱う問題をより簡易な形で説明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、プロスペクト理論や後悔理論などとの違いを考察するとともに、この数理モデルによってより一般的な意思決定を説明できないか研究する。
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