研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H05433
|
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高木 朗子 (林朗子) 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (60415271)
|
研究分担者 |
田中 昌司 上智大学, 理工学部, 教授 (30188304)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
キーワード | 精神疾患 / マルチスケール / 構成的理解 / シナプス / モデリング |
研究実績の概要 |
DISC1 KDマウスおよび対照マウスの前頭野II層錐体細胞を比較したところ、DISC1 KDマウスでは、巨大スパイン(対照マウスのスパイン体積分布において上位3SD以上)の頻度が約10倍(KD3.4%、対照0.26%)であることが明らかになった。巨大スパインへの入力を調べるために、グルタミン酸アンケージング法により、巨大スパインを含む単一スパインを特異的に刺激し、樹状突起および細胞体で生じる現象を詳細な時系列データとして計測した。標準的なスパインだけを同時刺激すると最低でも8個のスパイン入力が必要だったが、巨大スパインへの入力では、1~3つの入力で十分に活動電位を惹起することができ、この際に、本来ならば必要なCa2+スパイクは不要であることも明らかになった。すなわち、巨大スパインへの入力は新規の超線形性の神経発火を誘発することが明らかになった。さらに、DISC1 KDマウスでは、神経発火の亢進、神経回路の不安定(分担:田中、In silicoコンピュテーション)が見られ、巨大スパインのクラスター密度と実効機能には負の相関があることも明らかにした。このように、巨大スパインへのシナプス入力→樹状突起スパイク→神経発火との関連・因果関係を厳密な定量的時系列データより導きだし、回路、および個体レベルとの相関を世界に先駆けて明らかにした。スパインサイズがこれほど大きな超線形効果を誘発することを世界で初めて示した研究であり、現在、論文改定作業中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
5年間で行う実験計画はほぼ終了し、論文改定作業にはいったため。
|
今後の研究の推進方策 |
疾患特異性・横断性およびモデル動物特異性・横断性を示すために、別の統合失調症モデルマウスであるSETD1Aヘテロノックアウトマウスでも同様の解析を行う。既にモデル動物の搬入・繁殖は完了し、実際のデータの採取を開始している。またピッツバーグ大学との共同研究で統合失調症の死後脳に関してもスパイン解析を遂行する予定である。
|