研究領域 | マルチスケール精神病態の構成的理解 |
研究課題/領域番号 |
18H05434
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
林 康紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (90466037)
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研究分担者 |
喜田 聡 東京農業大学, 生命科学部, 教授 (80301547)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 記憶学習 / PTSD / 光増感法 / シナプス可塑性 / スパイン |
研究実績の概要 |
Chromophore-assisted light inactivation (CALI)を用い、光にてコフィリンを不活化することで、海馬長期増強(LTP)を起こしたシナプスを特異的に解除する技術を確立した。まず、高効率でCALIが誘導可能なSuperNova (SN)と Cofilinの融合蛋白質(Cofilin-SN)をスライス培養海馬神経細胞のspineに発現させた。sLTPの誘導後10-40分にspineと樹状突起に光を照射してCofilinを不活化すると、スパインが縮小しsLTPが解除された。sLTPを誘導していないspine形態には影響がないため、LTP特異的に誘導から40分以内で解除できると考えられる。電気生理の手法によっても、光でcofilinを不活化することでLTPが解除されることを確認した。
In vivoでLTPの抑制を行うために、AAVにより海馬CA1神経細胞でCofilin-SNを発現させ、光ファイバーを通じて海馬に光照射した。記憶はInhibitory Avoidance (IA) testにより検討した。記憶が形成されたと想定される電気ショックの2-20分後にCALIを行うとDay2での遅滞時間が解消した。一方で電気ショック60分以降、または電気ショック1分前にCALIを行っても記憶に影響はなかった。これはspineのsLTPの結果と一致しており、電気ショックによるLTP誘導40分後までに光照射でLTPが解除された結果、記憶が消去されたと考えられる。以上から、光照射によりCofilinを不活化する本手法は、LTPを特異的に解除可能な新たな光操作技術であり、vivoでLTPを解除することによって記憶を消去する手法を確立した。 本技術は記憶固定化のメカニズムを解明するための画期的なツールとなると期待され、PTSDなどの治療にも役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ予想したとおりの結果が出ているため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は頭部装着型小型蛍光顕微鏡と併用し、実際に恐怖学習に伴いどのようなセルアセンブリが形成されるか、さらにそれが海馬局所にシナプス可塑性を消去した時にどのように変化していくかを検討していく。
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