研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
18H05438
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
小久保 英一郎 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 教授 (90332163)
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研究分担者 |
田中 秀和 東北大学, 理学研究科, 教授 (00282814)
長澤 真樹子 久留米大学, 医学部, 教授 (00419847)
小林 浩 名古屋大学, 理学研究科, 助教 (40422761)
井田 茂 東京工業大学, 地球生命研究所, 教授 (60211736)
奥住 聡 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60704533)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 惑星形成 / 原始惑星系円盤 / 太陽系 / 系外惑星 |
研究実績の概要 |
本計画研究では、(1) 微惑星形成の素過程、(2) 惑星形成の素過程、に対して数値計算を用いた徹底的な解明を行い、(3) 汎惑星形成理論と太陽系の起源、ではそれらの結果を総合して観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。平成30年度は (1) と (2) について研究を進めた。以下に主な研究の概要を述べる。 円盤の最も現実的な加熱メカニズムの1つである、電気抵磁気流体シミュレーションを体系的に行い、従来の惑星形成論で用いられてきた円盤モデルが現実的な円盤の温度を過大評価していることを突き止めた。 円盤風によるガス円盤の進化を考慮したスーパーアース形成を調べた。円盤風のためにガス円盤の分布がなだらかになり、原始惑星のI型移動が抑制されることがわかり、観測されている近接スーパーアース系の分布を再現できた。さらにペブル集積モデルを考えたときに、どれだけの量の水が地球型惑星に輸送されるのかを原始惑星系円盤のパラメータの関数として定量的に示した。 ガス円盤との相互作用による巨大ガス惑星移動の新たなモデルを構築した。従来は円盤につくる密度ギャップの外のガスと惑星は相互作用すると考えられていたが数値流体計算からギャップ内の低密度ガスと主に相互作用することを明らかにした。このモデルを用いて惑星形成シミュレーションを行い、系外巨大ガス惑星の分布が説明できることを示した。また、複数の巨大ガス惑星を持つ系外惑星系の軌道進化を数値計算によって明らかにした。 惑星集積の素過程である衝突シミュレーションを行い、局所破壊や衝突変形について調べた。また、それらを応用した惑星形成シミュレーションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本計画研究では、(1) 微惑星形成の素過程、(2) 惑星形成の素過程、に対して数値計算を用いた徹底的な解明を行い、(3) 汎惑星形成理論と太陽系の起源、ではそれらの結果を総合して観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。5年計画の前半では主として、(1) と(2) について研究を進める予定であるが、計画通り順調に様々な形成の素過程について研究を進めることができたため、おおむね順調であると判断できる。さらなる素過程の解明のための準備として数値計算コードの開発を進めていく。以下に開発中のコードについて述べる。 汎用グラフィックプロセッシングユニット(GPU)を用いた惑星集積用大規模多体計算コードの開発を行っている。相互重力計算を GPU で高速実行することで多体計算を加速し、大規模粒子数を扱うことを可能にする。また、天体どうしの衝突破壊を考慮した多体計算コードを開発し、それを用いて巨大衝突段階での原始惑星の軌道進化をシミュレーションしている。さらに、衝突を含む惑星-惑星散乱の長期高精度軌道計算の数値計算コードの開発を行っている。 また、原始惑星系円盤の観測的研究を担当する計画研究B02との共同研究会を開催し、各計画研究の目的と計画を共有し、原始惑星系円盤の形成と初期進化について、観測と理論の共同研究について議論を行った。
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今後の研究の推進方策 |
計画前半では (1) 微惑星形成の素過程、(2) 惑星形成の素過程、の研究を推進する。今後は平成30年度に得られた結果を、広いパラメータ範囲に応用するなどして発展させ、より一般的なものとし、多様な原始惑星系円盤に適用可能な形にまとめていく。また、他の重要な素過程についても解明を行う。そして最終的に、(3) 汎惑星形成理論と太陽系の起源、でそれらの結果を総合して観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。 この計画を円滑に推進していくために、定期的に研究会を開催し、共同研究を推進していく。また、関連分野に関する国際会議を開催し、国際的な共同研究も促進する予定である。 当計画研究は新学術領域内において、星・円盤形成及び系外惑星系の最新観測結果と星・円盤形成理論を活用しつつ、これら全体を互いにリンクさせる役割を担っている。このため他計画研究との連携を強化していくことが重要である。まず、その一歩として、他計画研究との共同研究会を定期的に開催していく。具体的には来年度以降、計画研究A01、A03とから共同研究会を開催する。
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