計画研究
本計画研究では、(1)微惑星形成の素過程、(2)惑星形成の素過程、に対して数値計算を用いた徹底的な解明を行い、(3)汎惑星形成理論と太陽系の起源、で はそれらの結果を総合して観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。2019年度は主として(1)と(2)について研究を進めた。以下 に主な研究の概要を述べる。(1)微惑星形成の素過程ダストの成長・移動モデルの構築: 雪線でのダストの分裂・リング形成を考慮したダスト進化モデルと、円盤の非理想磁気流体計算を組み合わせ、ダストリング付近でガスリングも形成されることを発見した。雪線内側におけるダスト濃集と重力不安定による岩石微惑星形成のモデル構築: 氷の昇華点より高温でも安定に存在可能な有機物に覆われた岩石ダストの付着合体を記述する弾性体モデルを構築し、一定量の有機物に覆われていれば、岩石ダストは特定の温度範囲では壊れずに合体成長し、微惑星まで成長可能であることを発見した。氷ペブルが移動して雪線の内側に入った際の昇華および氷ペブル内に含まれている岩石ダストの振る舞いを調べ、ペブル流入が多く乱流拡散が弱い円盤では、雪線付近での岩石ダストの堆積により、岩石微惑星が形成されうることがわかった。ダスト、微惑星、ペブルの統合モデルと円盤観測との比較: CO2氷の低い付着力を考慮したモデルによって、ALMAによる円盤のダスト熱放射の偏光観測の再現に成功した。(2)惑星形成の素過程微惑星の衝突・破壊過程: 衝突破片が小質量でも長時間かけて、惑星の軌道進化に影響を与えることを示した。微惑星の局所集積: 成長する木星からの重力摂動を考慮して、木星内側の微惑星の軌道進化を調べ、数10 km程度の大きさであれば、軌道移動は小さく微惑星は局所的な範囲に留まり、また衝突速度もあまり増大することがないため、局所集積が可能と判明した。
2: おおむね順調に進展している
本計画研究では、(1)微惑星形成の素過程、(2)惑星形成の素過程、に対して数値計算を用いた徹底的な解明を行い、(3)汎惑星形成理論と太陽系の起源、ではそれらの結果を総合して観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。5年計画の前半では主として、(1)と(2)について研究を進める計画であるが、順調に様々な形成の素過程について研究を進めることができ、多数の論文を発表することができた。以上から、進捗状況はおおむね順調であると判断できる。さらなる素過程の解明のための準備として数値計算コードの開発を進めているが、これらも順調に進んでいる。以下でコード開発状況について述べる。汎用グラフィックプロセッシングユニット(GPU)を用いた惑星集積用大規模多体計算コードの開発を行っている。さらに大規模並列計算機用の惑星集積用大規模多体計算コードの開発も進めている。これらのコードでは微惑星の衝突モデル、ガス円盤の進化などを取り入れている。また、ダストから惑星までの広い質量範囲を扱うことが可能な統計的惑星成長計算コードを開発している。
本研究で目指すのは、最新の星・円盤形成の観測・理論を踏まえた、現実的(非一様かつ動的)な惑星系の形成シナリオを構築することである。これまで計画通りに、(1)微惑星形成の素過程、(2)惑星形成の素過程、の研究が進展している。これらに関しては今後もさらに研究を深めていく。得られた結果を、広いパラメータ範囲に応用するなどして発展させ、より一般的なものとし、多様な原始惑星系円盤に適用可能な形にまとめていく。また、他の重要な素過程についても解明を行う。そして、当初計画通り、今後(1)と(2)の新しい知見と他の計画研究から得られた成果を取り込みながら、(3)汎惑星形成理論と太陽系の起源、の研究に本格的に取り組む予定である。そして最終的に、観測データと整合的な包括的惑星系形成モデル、汎惑星形成理論を構築する。上記研究を円滑に進めるために、課題内での定期的な研究会や打ち合わせを行い共同研究を促進する。関連する計画研究との共同研究会も開催し、計画研究間での共同研究も促進する。また、惑星形成理論に関する国際研究会を開催する予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (30件) (うち国際共著 10件、 査読あり 30件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (56件) (うち国際学会 22件、 招待講演 12件) 図書 (1件)
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