研究領域 | 新しい星形成論によるパラダイムシフト:銀河系におけるハビタブル惑星系の開拓史解明 |
研究課題/領域番号 |
18H05439
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研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
生駒 大洋 国立天文台, 科学研究部, 教授 (80397025)
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研究分担者 |
堀 安範 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, アストロバイオロジーセンター, 特任助教 (40724084)
成田 憲保 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (60610532)
寺田 直樹 東北大学, 理学研究科, 教授 (70470060)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 系外惑星 / 惑星大気 / 惑星形成 / 惑星進化 |
研究実績の概要 |
本計画研究は、太陽系外惑星に関する観測と理論の密な連携によって、惑星大気の形成・進化を理解し、惑星大気の多様性の起源を解明することを目標としている。
2020年度は、可視光多色撮像装置3号機(MuSCAT3)の開発が完了し、9月にファーストライトを迎えた。これによって、国立天文台ハワイ観測所岡山分室のMuSCAT1およびスペイン領テネリフェ島テイデ観測所のMuSCAT2を合わせて、北半球における24時間トランジット観測体制を確立することができた。そして、全天系外惑星探索衛星TESS等によって光度変動が確認された恒星に対して、MuSCAT1-3を用いた追観測を精力的に行い、系外惑星の探索を開始した。TESSの検出した恒星光度変動には惑星由来でないものが多くあったが、我々の追観測によってすでに10個以上のスーパーアースを発見することに成功した。なかでも、大気散逸が起きている、または、過去に経験したと考えられる惑星が複数個発見されており、それらは大気形成・進化理論の検証に有用な天体である。
理論面では、惑星大気の形成で最も重要な過程の一つである大気散逸について、その物理過程の詳細な検討と大気形成に与える影響の評価を多角的に進めた。まず、中心星の極近傍を周回し、高温のために岩石さえ蒸気になる惑星が消失せずに存在できるかどうかを理論的に検討し、地球質量より重い岩石惑星に関して数十億年の時間スケールで存続できることを示した。また、そうした岩石蒸気からなる大気をモデル化し、赤外分光観測での観測可能性も定量化できた。一方、比較的密度が低い岩石惑星が持つ希薄な大気の獲得または維持の可能性を、惑星形成のN体計算と大気散逸計算を組み合わせたモデルを開発した。結果として、古典的な比較的単純なモデルでは説明できず、円盤ガスの急速な散逸や巨大衝突、大気散逸の遅延効果など追加の効果の重要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
系外惑星トランジット観測用多色撮像装置の開発環境、マウイ島ハレアカラ観測所への輸送・試験観測を経て、本年9月にファーストライトを迎えることができた。全天系外惑星探索衛星TESSが検出した惑星候補天体に対して、順調に真の系外惑星の発見確認が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に整備が整った北半球多色トランジット観測ネットワークを使って、主にTESSで検出された惑星候補天体に対する追観測による惑星発見確認をさらに網羅的に進める。また、発見された惑星に対し、すばる望遠鏡の赤外分光装置IRDを用いた主星の視線速度観測やMuSCAT1-3を用いたトランジット時刻変動(TTV)観測により惑星の質量を決定し、得られた質量と半径の関係から惑星の内部組成を理論的に制約する。こうして得られる観測データと、惑星種族モデルによる理論予測を比較・検討し、現実との不一致の原因を特定し、理論モデルをさらに改良する。
理論面では、大気散逸に関する物理・化学過程を詳細に検討し、特に光化学反応および放射冷却過程の改良を進め、多様な惑星大気の強力な紫外線照射に対する安定性を明らかにする。また、それを惑星形成モデルに導入し、ハビタブル惑星の存在可能性を理論的に検討する。理論の改良にあたっては、領域内の他計画研究と密にコミュニケーションをとり、星形成・原始惑星系円盤形成・惑星形成の最新の理解を本計画研究の大気形成モデルに導入していく。
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