研究領域 | 都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究 |
研究課題/領域番号 |
18H05444
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三宅 裕 筑波大学, 人文社会系, 教授 (60261749)
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研究分担者 |
丹野 研一 龍谷大学, 文学部, 准教授 (10419864)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
前田 修 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20647060)
久田 健一郎 筑波大学, 生命環境系, 教授 (50156585)
常木 晃 筑波大学, 人文社会系, 教授 (70192648)
有村 誠 東海大学, 文学部, 准教授 (90450212)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 西アジア / 新石器時代 / 生業 / 社会構造 / 集落構造 / 工芸技術 |
研究実績の概要 |
古代西アジアの都市の本質に迫ろうとする領域全体の研究目的の中において、本研究は都市が出現する以前の先史時代を考察の対象にしている。特に、新石器時代においても都市的様相が認められることに注目して、その実態を解明することにより、その後の都市社会との比較を通じて、都市そのものに対する理解を深めることを目指している。 メガサイトと呼ばれることもある大規模集落については、西アジア各地の事例の集成により、従来考えられていたよりもさらに古い時期にまで遡ることが明らかになり、農耕社会の成立を背景として形成されたものではなかった可能性がでてきた。集落の中に認められる儀礼祭祀と深く関係する公共建造物は、近年その事例の増加が著しく、特に新石器時代の前半期の集落においては広範な地域に一般的に認められる施設であった可能性を考えることができるようになった。威信財的性格をもった特別な器物の生産・流通については、石製品を中心に資料の集成を進め、これも新石器時代の前半期に多くの事例が確認され、社会のあり方と関係している可能性が高くなった。長距離交易ネットワークの形成については、黒曜石・海産貝類・銅製品を中心に資料の収集を進め、特に黒曜石についてはマンチェスター大学との共同研究によって、分析数を増やすことができた。海産貝類については、新石器時代の前半期において500㎞も内陸に運ばれていたことや、新石器時代の中で産地が地中海から紅海へと転換していることが確認され、具体的な状況の把握が進んだ。植物資料と動物資料については、新石器時代の前半期を中心に資料の集成を進め、生業の具体的なあり方を把握できるようにするとともに、人骨の同位体比分析による食性分析も継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで、トルコ、イラク、アルメニアなどにおいて、新石器時代の遺跡の発掘調査や出土遺物の分析を実施することができ、本研究に関連する新たな資料を得ることができた。また、本研究に参画している研究者が分担して個別に進めている研究も、順調に進展していると言え、その成果は適宜研究集会を開催することで、研究組織内での共有も図ってきた。 また、2019年6月には、日本西アジア考古学会の第24回大会において、「北西シリアの新石器時代」をテーマとする特別セッションを企画し、本研究組織を構成する研究代表者・研究分担者7名全員が口頭発表をおこない、これまでの研究成果を一般の学会員に向けて発信するとともに、そこでの総合討論において有益なフィードバックを得ることができた。さらに、その特別セッションをベースに、日本西アジア考古学会の学会誌である『西アジア考古学』21号において特集を組み、本研究に関連する5本の論考を掲載することができた。これらの論考は、本研究の成果の中間発表的位置づけにあり、それを研究組織外に発信する機会が得られたことで、自らの研究内容の精査をおこなうことができ、今後の研究の進め方についても明確な方向性を定めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのところ本研究は概ね順調に進んでいると評価できることから、今後も基本的にこれまでと同様の体制で研究を進めていく計画である。 研究分担者1名が所属機関を退職したことにともない、研究分担者の資格を喪失したため、研究組織に変更を加えることとした。石器の石材や産地の分析を担当してきた当該研究者については、今後も研究協力者などの形で本研究に参画してもらえることになっており、今回の変更による本研究推進への実質的な影響はほとんどない。また、これまでは新石器時代研究を主眼とする体制を組んできたが、今回の研究組織の改編を機に、都市化の過程に相当する銅石器時代を専門とする研究者を新たに研究分担者として加え、比較的手薄だった分野を補強し、全体として研究体制の強化を図った。 今後の問題としては、新型コロナウイルス感染症の蔓延による活動制限が挙げられ、特に海外での調査・研究に支障が出る可能性がある。しかし、これにより本研究全体の推進が困難になるようなことはなく、状況の推移を見ながら、当面は国内での研究活動を優先させるなどして対応していく予定である。
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