研究領域 | 都市文明の本質:古代西アジアにおける都市の発生と変容の学際研究 |
研究課題/領域番号 |
18H05446
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
近藤 二郎 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (70186849)
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研究分担者 |
河合 望 金沢大学, 新学術創成研究機構, 准教授 (00460056)
馬場 匡浩 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (00386583)
内田 杉彦 明倫短期大学, 歯科衛生士学科, 准教授 (00211772)
高宮 いづみ 近畿大学, 文芸学部, 教授 (70221512)
西本 真一 日本工業大学, 建築学部, 教授 (10198517)
柏木 裕之 東日本国際大学, エジプト考古学研究所, 客員教授 (60277762)
田澤 恵子 (財)古代オリエント博物館, 研究部, 研究員 (30598587)
周藤 芳幸 名古屋大学, 人文学研究科, 教授 (70252202)
長谷川 奏 早稲田大学, 総合研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (80318831)
中野 智章 中部大学, 国際関係学部, 教授 (90469627)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | エジプトの都市 / 都市の景観 / ナイル川下流域 / メンフィス / テーベ / 谷の祭りとオペト祭 / 墓域と都市景観 / アレクサンドリア |
研究実績の概要 |
初年度である2018年度においては、古代エジプトの都市景観、そして都市間のネットワークの復元に向けて各種の衛星画像データを入手し、解析作業を開始した。古代エジプトの都市に関して、前4千年紀の先王朝時代から古代末期までの各地の都市景観とその構造について文字史料と考古資料の双方から研究し、その発生と変容について通時的・共時的に解明するための問題点を明らかにする作業を実施した。 2018年度に実施した研究テーマと研究責任者は以下のとおり。①古代エジプトの祝祭都市テーベの景観と構造(近藤二郎)。②メンフィスとその墓地の景観と構造についての予察(河合 望)。③先王朝時代の都市研究(馬場匡浩)。④先王朝時代~古王国時代の都市研究(高宮いづみ)。⑤初期王朝時代・プトレマイオス朝時代の都市および王の表象の変化研究(中野智章)。⑥古代エジプト都市に関する文献学的研究(内田杉彦)。⑦オベリスクの建造方法に関する研究(西本真一)。⑧ナイル・デルタの景観復元:アレクサンドリアの後背地域を中心に(長谷川奏)。⑨プトレマイオス朝時代の研究(周藤芳幸)。 上記の研究のうち、①と②に関しては、より詳細な研究を実施することができた。古代エジプトは、南北に長く先王朝時代末期から、南北に二つの中心拠点が形成されるようになる。これが北のメンフィス(下エジプト第1ノモス)と南のテーベ(上エジプト第4ノモス)である。これら二つの中心拠点は、古代エジプトの王都であるとともに、宗教センターとしての役割を帯びていた。これら二つの都市は、古来から他のナイル川下流域の都市とは一線を画すものであり、古代エジプトを代表する都市であった。しかしながら今日、往時の都市の詳細は極めて不詳であり、現存する神殿や墓域、そして文字史料を解析することによって古代の都市の実態に迫る研究を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エジプト・アラブ共和国は、他の西アジア地域と比較して現地調査が継続的に実施できており、実際に現地において、特に景観の問題等を具体的に検討できたことは実に大きなことであった。また、実際の現地調査を実施することにおいても、実際の衛星画像を入手することで詳細な地域ごとの検討が初めて可能となった。特に初年度は、古代エジプトの南北の中心拠点であるメンフィスとテーベの二大中心拠点の領域を中心として、幾つかの衛星画像を入手することで現地調査を実施する際の新たな仮説の構築と現地調査のためのヒントの検出を実施することに着手することができた。 上記のメンフィスとテーベの南北二大重要拠点の他に、メンフィスとテーベの二つの都市の丁度中央に位置する新王国時代の宗教改革の拠点であったテル・アル=アマルナおよびその周辺地域の画像データもあらたに入試することが可能であった。ただ衛星の画像データ取得に関して、購入できたのではあるが、画像データを入手するのが遅れてしまったため、それにともなって解析作業が遅れてしまったことも大きな理由と言える、 古代エジプトの都市の研究に着手してみて、改めて古代エジプトの都市の実態が予想以上に不明な部分が多く、特に都市そのものの研究がほとんど行われていないことを再認識した。古代エジプトでは、都市以外の遺構である神殿・墓などの調査研究を中心として研究が行われているため、現在まで古代エジプトの都市自体の発掘・研究がほとんど行われておらず、今後、こうした都市自体の研究を積極的に展開していく必要があるし、実際にエジプトで住居域を発掘している調査隊との協力が不可欠である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、2018年度に購入した衛星画像データの分析などの積極的な活用を考えていく。今年度は5月から研究会・講演会を開催するなど、研究組織の代表者・分担者・協力者相互の議論を高めていくことで、より研究の実践的な方向を具体的なものへとしていく努力をしていく。 また、本研究の特色のひとつでもあるエジプト・アラブ共和国、現地における発掘調査の実施によって、より具体的な古代エジプト都市の様相を明らかにしていく。また古代エジプトの都市の景観の復元などに関しては、実際に現地に赴き、現地に於いて詳細な検討を実施することとする。都市の景観の復元のためには、事前に衛星画像データを駆使して、調査箇所の絞り込みをおこなっていきたい。 メンフィス、テーベ、アマルナの3大中心拠点の他、アレクサンドリア、アスワンを加えた主要な五大拠点都市の研究を行うと共に、実際に発掘作業が現在も継続して実施されているダハシュール北遺跡、アコリス遺跡、そしてデルタ地帯のコーム・アル=ディバゥ遺跡に関してデータの集積をおこなう。 また、今年度は海外の研究者を招聘することで古代エジプトの南の拠点都市であったテーベの新王国第18王朝時代の様相を討議することで、古代エジプトの一大拠点都市であったテーベの都市の機能と景観に関して明らかにしていきたい。今年度は、特に新王国第18王朝アメンヘテプ3世治世を取り上げていく。
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