研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
18H05452
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
加藤 秀実 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80323096)
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研究分担者 |
和田 武 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10431602)
武藤 浩行 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20293756)
武藤 泉 東北大学, 工学研究科, 教授 (20400278)
佐々木 拓也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (70815787)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ハイエントロピー材料 / ポーラス金属 / 耐食性 / セラミックス / ヘテロ構造 / バルク金属ガラス |
研究実績の概要 |
A01イ班ではハイエントロピー(HE)効果に基づく新材料創製と新機能創出を目的として研究を行っている。本班で推進している5つの研究テーマについて当該年度に得られた成果は下記の通りである。(1)HE合金のナノ多孔およびナノ複合化:前年度に得たMg/Fe基ヘテロ材料中にAl、Ni、Yを添加することでMg相を多元化し、析出強化や固溶強化によってヘテロ材料の強度を向上するとともに延性を維持することに成功した。 (2)HE耐食合金設計:塩化物水溶液での孔食に対してはCr2O3を含有する不働態皮膜が保護作用を発揮し,高温酸化に対してはAl2O3系酸化スケールが生成し耐酸化性を確保するAl8Co19Cr23Fe32Ni18合金を開発した。この合金を1M-H2SO4中で動電位アノード分極することで、耐酸化性を維持したまま孔食発生電位を上昇させることに成功した。 (3)HEセラミックスの超高圧合成:遷移金属とNH4Clとの混合する高圧合成法を用いて5族(V, Nb, Ta)および6族(Cr, Mo, W)の遷移金属からなる多成分系遷移金属窒化物を高圧下で合成し、その結晶構造を明らかにした。 (4)HEセラミックスの新規ヘテロ構造化:多元系複合顆粒を作製するためのプロセスマップを提案し,ヘテロ凝集領域,つまり,複数種のサスペンションが混合された後に「見かけのζ電位」がゼロ付近になる状態を予想することで,用いる原料粒子の粒径,組成比を加味してそれぞれのサスペンションのζ電位を解析的に決定することができる手法を確立した (5)HE合金のバルク金属ガラス化:(Zr1-xHfx)65Cu20Al10Ni5合金をハイエントロピー化することでガラス転移、核生成、結晶化が抑制されることが分かり、ハイエントロピー化によって液相が均質化されていることや、液相、結晶中で遅い拡散が生じている可能性があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HE合金のナノ多孔およびナノ複合化についてはMg/Feヘテロ材料からこれを多元化することにに成功しており、強度と延性を両立する複合材料の作製することができている。HE耐食合金設計については各合金元素と耐食性の関係を明らかにするとともに、電気化学処理を用いて新たな耐孔食性・耐酸化性を有する新合金の開発に結び付けている。HEセラミックスの超高圧合成については高圧下における塩化アンモニウムと各種遷移金属の高圧化における反応を利用して新たな5,6元の窒化物合成に成功しその結晶構造を明らかにしている。HEセラミックスの新規ヘテロ構造化についてはゼータ電位に着目したプロセスマップを構築することで多元複合顆粒作製法を確立している。HE合金のバルク金属ガラス化では多元化によって金属ガラスのガラス転移と結晶化にが抑制される新たな現象を発見している。総じて5つの研究テーマにおいてHE効果を利用した新材料創製と新機能創出が計画通りに順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
(HE合金のナノ多孔およびナノ複合化)R3年度の研究により, LMDを通じたナノヘテロ複合材料の新たな材料強度設計指針を提示することができた. 今後, HEAナノヘテロ複合材料にも本知見を展開し, 従来の一般の金属複合材料に見られる強度と延性のトレードオフの関係を打破した新規HEAナノヘテロ複合材料の開発を目指す. (HE耐食合金設計)各合金元素と耐食性の関係に基づいた新しい合金の開発と、電気化学処理を併用して目的の機能を発現する耐食合金の開発を行う。 (HEセラミックスの高圧合成) 5族(V, Nb, Ta)および6族(Cr, Mo, W)の遷移金属からなる多成分系遷移金属窒化物を高圧下で合成することに成功した.今後,硬度測定が可能な大容量の試料回収を目指し,より低い圧力および温度での合成を行う. (HEセラミックスの新規ヘテロ構造化)公募班および計画班と協調してナノサイズのHAO粒子の作製と高分散複合材料の開発,並びに,これらの粉末を用いた超高密化に関する研究に取り組む. (HE合金のバルク金属ガラス化)R3年度に得られた金属ガラスの多元化によるガラス転移・結晶化・核生成の抑制現象を熱分析や組織観察によってより詳細に調べその発現機構を明らかにして、新しいハイエントロピー金属ガラスの作製に結び付ける.
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