研究領域 | ハイエントロピー合金:元素の多様性と不均一性に基づく新しい材料の学理 |
研究課題/領域番号 |
18H05453
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
尾方 成信 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (20273584)
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研究分担者 |
都留 智仁 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究主幹 (80455295)
下川 智嗣 金沢大学, 機械工学系, 教授 (40361977)
久保 百司 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (90241538)
青柳 吉輝 東北大学, 工学研究科, 准教授 (70433737)
弓削 是貴 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70512862)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ハイエントロピー合金 / 力学特性 / 計算材料科学 |
研究実績の概要 |
本年度は、当計画班および領域全体の目標達成に向けて以下の研究を実施した。 ①ハイエントロピー合金の照射損傷耐性評価のための格子間原子拡散の原子論的解析 ②ハイエントロピー合金の短距離秩序構造に対して有効な履歴依存一般化積層欠陥理論構築 ③大規模第一原理計算によるハイエントロピー合金の転位芯構造解析 ④ハイエントロピー合金における粒界偏析が転位放出現象に及ぼす影響の原子論的解析 ⑤ハイエントロピー合金の応力腐食割れに関する反応分子動力学シミュレーション ⑥結晶塑性FEMシミュレーションにおける冷間圧延ハイエントロピー合金の集合組織 ⑦ハイエントロピー合金の熱力学的平衡状態の微視的構造の幾何学的考察。 これらの研究により以下のことがそれぞれ明らかになるかまたは達成された。 ①ハイエントロピー合金内では、点欠陥の拡散速度は純金属のそれと大きな変化がない一方で、格子間原子の拡散は極端に遅くなることが分かった。②短距離秩序構造を有するハイエントロピー合金では積層欠陥エネルギーが原子層間のすべりの履歴に依存することを示し、このことを考慮した履歴依存一般化積層欠陥エネルギーの概念を新たに提案した。③BCC構造を有するハイエントロピー合金のらせん転位の転位芯構造と短距離秩序構造との関係を第一原理計算を用いて明らかにした。④ハイエントロピー合金内では粒界自由体積が減少し、粒界からの転位放出を困難化することが分かった。⑤水との反応によって形成された非晶質の表面酸化膜が積層欠陥の生成を抑制することがわかった。⑥結晶塑性FEM解析で集合組織情報ならびに力学異方性を再現することを可能とした。⑦微視的構造と多体相互作用の間の非線型な対応関係が原子半径比や格子中の幾何学情報で整理できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年は特に近年着目されている短距離秩序構造に着目し、その形成過程や形成条件を明らかにするとともに、それが格子欠陥の核生成、運動に与える影響を解析することを目標として実施したが、短距離秩序構造が転位の運動に与える影響などを第一原理から明らかにしており、計画通り実施できている。またそれに加えて、短距離秩序構造が積層欠陥の履歴依存性を通じて変形履歴依存性を有することや、それを体系化する履修依存一般化積層欠陥エネルギーの概念を新たに提唱するなど、予定を上回る結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、短距離秩序構造の形成速度を解析する技術を確立する。そして、それを用いて熱緩和温度および時間によって短距離秩序構造を制御するための、制御マップを構築する。そして短距離秩序構造の制御を通じた強度や延性の制御可能性について検討する。随時、A01班、A03班から提供されるミクロな観察実験との比較による解析結果の妥当性の検証や、解析結果の各班への提供を行い、計算・理論・実験の三位一体で研究を前進させる。得られた知見を集約して広い温度・応力域、様々な腐食環境での変形を記述する力学特性マップの構築を推進する。
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