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2018 年度 実績報告書

生物の自己改変能力を実装するバイオソフトロボティクス

計画研究

研究領域ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合
研究課題/領域番号 18H05467
研究機関大阪大学

研究代表者

清水 正宏  大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (50447140)

研究分担者 梅舘 拓也  東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 特任講師 (60582541)
細田 耕  大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (10252610)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2023-03-31
キーワード生物 / 自己改変能力 / バイオソフトロボティクス
研究実績の概要

H30年度は,以下の3つの研究を推進した。
1.カエルサイボーグ:生体筋弾性エネルギーの効率的利用。遊泳運動を生み出す腓腹筋は、膝関節と足首関節を跨ぐ二関節筋であり、関節伸展時に負荷を受ける。関節伸展の有無による、筋の出力特性を計測し、カエルサイボーグの遊泳能力を向上させるための生体筋弾性エネルギーの効率的利用を検討した。
2.細胞触覚センサ:触覚刺激強度の実験的同定。これまで細胞が外部からの機械刺激に応答して、カルシウムイオンを取り込む性質や、細胞の分布・配向を変える性質を利用することで、事前にトレーニングとして加えていた機械刺激を選択的に知覚する触覚センサを達成した。開発した機械刺激装置によって,PDMS膜越しに細胞への機械刺激を印可し、カルシウムイオンの蛍光量を計測することで、触覚センサとしての性能を評価した。
3.心筋細胞ロボット:心筋細胞群の非線形振動子ネットワークモデル。ラットの心筋細胞は、身体構造(コラーゲンゲル薄膜)を駆動するためのアクチュエータとして働く。心筋細胞は、身体構造に適した関節を駆動するように自律的に配置を変更することができた。しかしながら、現状では、機械刺激による細胞の振る舞いを利用したに過ぎず、心筋細胞群の拍動タイミング(アクチュエータの駆動タイミング)を制御できていない。H30年度においては、ギャップジャンクションを介して構成される心筋細胞群の拍動を非線形振動子ネットワークとしてモデル化した。さらに、今まで取り組んできたイモムシ型やミミズ型のひも状構造を起点にして, 3次元的にも心筋を配置した時に,身体構造に依存して変わる心筋細胞群の分布からどのように拍動リズムが自発生成されるかを議論した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

H30年度は、新学術領域が開始し、年度当計画していたプロジェクトを推進することができた。一方で、3Dバイオプリンタ納品の遅れにともない、研究経費を一部翌年度に繰越して推進した。このことから、おおむね順調に進展していると評価した。本年度は、H30年10月までに、新学術領域研究採択、共通機器3Dバイオプリンタ選定・発注、3Dバイオプリンタ納品を行い、H31年3月までに、初代培養細胞のプリント実験、細胞駆動型ロボットのプリント実験を行う予定であった。しかしながら、オプション部品(熱可塑性樹脂用ヘッド、冷却用ヘッド、高精度シリンジヘッド)を外国で新規に素材調達・加工・製造した上で、輸入を伴う納品が必要だったため、納期が遅延することが明らかとなった。その結果、細胞駆動型ロボットのプリント実験の開始が3ヶ月遅延することとなった。当該計画研究を構成する、3つの研究(カエルサイボーグ、細胞触覚センサ、心筋細胞ロボット)については、実績報告で示したとおり、当初予定していた実験を予定通り推進することができた。

今後の研究の推進方策

H31年度は、新学術領域研究の計画研究班における連携のみならず、公募班との連携も重視し、研究を推進する。
1.カエルサイボーグ:アクチュエータとして用いる筋組織は、生体から切除後、数時間程度しか使えないため、長期間の培養方法を確立し、サイボーグの実用性向上を試みる。これにより、サイボーグ型バイオソフトロボットの実用的な運用を達成する。ここでは、同時に、カエル筋組織の電気刺激以外での筋組織の活性化手段についても検討する。具体的には、光刺激、化学刺激、熱刺激、磁気刺激である。これらの刺激のために、遺伝子改変を行ったカエル個体を作成する。どの刺激が適切であるかを検討する。
2.細胞触覚センサ:ロボットハンドに実装可能な細胞触覚センサを実現するためには、超薄型の細胞触覚センサデバイスを開発しなければならない。この目的のために、細胞触覚センサに実装可能な多電極を実装したチャンバを設計し、細胞の触覚受容時に発生する微弱な電圧を計測する。このために、MEMS技術によって、チャンバの設計・製作を行う。
3.心筋細胞ロボット:心筋細胞を自律分散的に制御するために、心筋細胞への拍動のフィードバックシステムを構築する。光受容性のチャネルロドプシン遺伝子を導入し、光刺激時に心筋細胞の拍動リズムを修正する系を構築し、自律分散制御を実現する。また、領域の共通機器として導入したバイオ3Dプリンタによって、心筋細胞を包埋したゲル構造体の形状を直接造形する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Caterpillar-inspired Crawling Robot using Both Compression and Bending Deformations2019

    • 著者名/発表者名
      T. Umedachi, M. Shimizu, Y. Kawahara
    • 雑誌名

      IEEE Robotics and Automation Letters

      巻: 4 ページ: 670-676

    • DOI

      10.1109/LRA.2019.2893438

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 日本ロボット学会第115回ロボット工学セミナー実施報告2019

    • 著者名/発表者名
      梅舘拓也
    • 雑誌名

      日本ロボット学会誌

      巻: 37(1) ページ: 67-68

  • [雑誌論文] ソフトロボティクスの歴史と現状,今後の展望2019

    • 著者名/発表者名
      細田耕
    • 雑誌名

      日本ロボット学会誌

      巻: 37(1) ページ: 7-11

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公開日: 2021-01-27  

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