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2018 年度 実績報告書

微細構造を活用した生物のやわらかい飛翔と遊泳の原理解明と実装

計画研究

研究領域ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合
研究課題/領域番号 18H05468
研究機関東京工業大学

研究代表者

田中 博人  東京工業大学, 工学院, 准教授 (80624725)

研究分担者 中田 敏是  千葉大学, 大学院工学研究院, 特任助教 (80793190)
山崎 剛史  公益財団法人山階鳥類研究所, 自然誌研究室, 室長 (70390755)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2023-03-31
キーワード羽ばたき翼 / 流体構造連成 / 飛行ロボット / 遊泳ロボット / バイオミメティクス / バイオメカニクス / ハチドリ / ペンギン
研究実績の概要

本研究計画は以下の4項目から構成される:A.各種運動・形態測定システムの開発による、生物とロボットの「しなやかな運動」と「しなやかな変形」の定量的計測;B.生物標本を用いた翼・筋骨格構造の形態と機械特性の計測;C.数値計算と機械モデル実験による流体構造連成理論の構築と身体設計最適化手法の開発;D.レーザ加工、折り紙立体構造、自己組織化などのセンチ-サブミリ構造製作技術を用いた、高効率・高適応性の生物的流体構造・機構連成メカニズムのソフトロボットへの実装。
2018年度は、各項目で計画以上の進展があった。項目Aではペンギンとイルカの遊泳の運動や変形を解析し、流体力学解析を行った。さらにSCM(Space Curving Method)によるペンギンの3次元形状モデリングも試行中である。項目Bでは、アマツバメ目の鳥やフクロウについて羽根の形態計測や剛性計測を実施し、形態・生態・力学メカニズムの研究を実施している。項目Cではハチドリを模した羽ばたき機構に弾性構造を導入して実験を開始した。項目Dでは、紫外線レーザ加工機を用いてハチドリ模倣弾性翼の製作を行っている。
研究成果は、総合系国際論文誌に1報、生物系国際学会に3報、機械系国内学会に5報、生物系国内学会に3報発表した。未発表の研究内容もあり、それは今年度に発表予定である。特許は、ペンギンを模倣した電動羽ばたき機構に関して1件出願した。また、解説記事(書籍の章を含む)は5報、招待講演は2報あり、幅広い分野に向けて情報発信している。さらに新聞報道も1報あり、一般に向けた情報発信も行っている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2018年度は、本研究計画を構成する4つの項目で計画以上の進展があった。項目Aでは、水族館で12台の水中ビデオカメラで撮影したペンギンの羽ばたき遊泳の画像をDLT(Direct Linear Translation)法で解析し、翼と胴体の3次元運動および翼の曲げ変形を定量的に明らかにし、旋回機動中の翼運動の左右差を明らかにした。また水族館で2台の高速ビデオカメラで撮影したカマイルカの高速遊泳を運動解析し、さらに体の詳細な3次元形状計測に基づく数値流体計算を行い、打ち下ろしの方が打ち上げよりも推力が大きいことを明らかにした。
項目Bでは、アマツバメ目のチャムネエメラルドハチドリとアマツバメの羽軸の曲げ剛性計測を行い、羽ばたきホバリングを行うハチドリの方が固定翼滑空を行うアマツバメよりも、翼幅方向外側と内側の曲げ剛性の違いが大きく翼面が捩れやすいことを明らかにした。またペンギンについて、水族館で採取した胴体の羽毛の形態計測を行い、羽枝間隔に基づくリブレットモデルを作成して数値流体計算を行い、羽枝が摩擦抗力を減少しうることを明らかにした。さらに様々なフクロウの前縁セレーションの形態計測と生物学的な種間比較を行い、食性とセレーション面積に相関があることを発見した。
項目Cでは、回転DCモータの回転軸に捻りバネを介して翼を取り付けた機械モデルを製作し、捻りバネの共振によって羽ばたき振幅を増大できることを明らかにした。
項目Dでは、紫外線レーザでCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic)板を切り出して製作した人工羽軸とポリイミドフィルムで模した翼膜により、ハチドリの羽軸の曲げ剛性を再現した模倣翼を製作した。電動羽ばたき機構で試験した結果、曲げ剛性分布の存在によって翼面の捩れが誘起され揚力と効率がともに向上することを明らかした。

今後の研究の推進方策

2019年度以降は、飛行・遊泳ソフトロボットに期待する敏捷性やロバスト性に関する研究を深めていく。項目Aでは、水族館で遊泳するペンギンに対してエサの投入などの刺激を与え、激しい敏捷な遊泳機動を誘起して、その際の遊泳運動や体と翼の変形を明らかにし、力学的メカニズムを調べる。さらに現在試行中の SCM(Space Curving Method)による3次元形状モデリング方法を適用して胴体の3次元形状を計測し、首や尾部の変形と流体力への寄与を調べる。項目Bでは、ペンギンの死体を用いて翼の形態計測および剛性計測を行い、水中羽ばたき翼における弾性変形の効果を調べる。流体力学実験は、昨年度に試作した電動3自由度羽ばたき機構を用いて回流水槽で力計測と流れ場可視化計測を行う。特に大きな流体力を発生する際の流体構造連成に着目する。また、ペンギンおよびサメの胴体表面の羽根および楯鱗が形成する微小な3次元溝パターンを形態計測する。流体摩擦に及ぼす影響だけでなく、遊泳運動に応じた流速変化や3次元胴体形状に起因する境界層剥離に対する影響について重点的に調べる。項目Cでは、リアルタイム画像処理運動計測システムを導入し、気流に外乱を与えた際の弾性構造の効果を調べる。項目Dでは、ハチドリ模倣翼について、さらなる複合材料化を進めて耐久性のある壊れない実用的な翼を実現する。これを試作中の電動ハチドリ型飛行ロボットに実装して飛行試験を行う。また、ペンギンおよびサメの胴体表面の微小構造をフィルムの紫外線レーザ加工で模倣し、回流水槽実験に用いる。特に、羽根や楯鱗の可動性の再現を重視する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Measurement of time-varying kinematics of a dolphin in burst accelerating swimming2019

    • 著者名/発表者名
      H. Tanaka, G. Li, Y. Uchida, M. Nakamura, T. Ikeda, H. Liu
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 14 ページ: e0210860

    • DOI

      https://doi.org/10.1371/journal.pone.0210860

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 飼育下におけるイルカ3種の呼吸姿勢に関する研究2019

    • 著者名/発表者名
      吉田瑞希, 森阪匡通, 安田健太, 藤原克則, 若林郁夫, 櫻井夏子, 田中博人, 大泉宏
    • 学会等名
      第66回日本生態学会
  • [学会発表] 流体力学と動物行動学の間2019

    • 著者名/発表者名
      菊地デイル万次郎
    • 学会等名
      第66回日本生態学会
  • [学会発表] 昆虫の筋骨格系を規範とした高効率な羽ばたき機構の設計と作製2019

    • 著者名/発表者名
      小泉咲人, 吉田直人, 中田敏是, 劉浩
    • 学会等名
      日本機械学会関東支部 第25期総会・講演会
  • [学会発表] Measurement of Flexural Stiffness of Hummingbirds's feathers and its aerodynamic effect in hovering2019

    • 著者名/発表者名
      H. Tanaka, A. Kawahara, M. Aizawa, and T. Yamasaki
    • 学会等名
      SICB Annual Meeting 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Three-dimensional wing motions of a diving penguin2019

    • 著者名/発表者名
      T. Oura, M. Maeda, and H. Tanaka
    • 学会等名
      SICB Annual Meeting 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] Fluid dynamics function of the rhinoceros auklets' horn in flying and swimming2019

    • 著者名/発表者名
      D. M. Kikuchi, M. Maeda, K. Shiomi, and H. Tanaka
    • 学会等名
      SICB Annual Meeting 2019
    • 国際学会
  • [学会発表] ハチドリの風切羽の曲げ剛性分布を規範とした人工羽ばたき翼2018

    • 著者名/発表者名
      河原暁生, 田中博人, 山崎剛史
    • 学会等名
      日本機械学会 2018 年度年次大会
  • [学会発表] ペンギンの羽ばたき遊泳の3次元運動解析2018

    • 著者名/発表者名
      大浦琢真, 前田将輝, 田中博人
    • 学会等名
      日本機械学会 2018 年度年次大会
  • [学会発表] ペンギンの羽枝構造が持つ摩擦抗力低減効果2018

    • 著者名/発表者名
      岸根宏明, 前田将輝, 田中博人, 山崎剛史
    • 学会等名
      日本機械学会 2018 年度年次大会
  • [学会発表] ハチドリを模倣した小型羽ばたき飛翔体における高性能弾性翼の研究2018

    • 著者名/発表者名
      相澤誠浩, 田中博人, 山崎剛史
    • 学会等名
      第29回バイオフロンティア講演会
  • [学会発表] セレーションの進化―フクロウ風切羽の幾何学的形態測定学―2018

    • 著者名/発表者名
      山崎剛史,田中博人,中田敏是
    • 学会等名
      日本鳥学会2018年度大会
  • [学会発表] 生物の羽ばたき飛翔と遊泳のソフトロボット応用2018

    • 著者名/発表者名
      田中博人
    • 学会等名
      第98回東京工業大学技術交流セミナー(第8回おおた研究・開発フェア併催)
    • 招待講演
  • [学会発表] 飛行と遊泳のバイオミメティクス:ソフトロボットへの応用2018

    • 著者名/発表者名
      田中博人
    • 学会等名
      プラスチック成形加工学会第166回講演会 バイオインスパイアード技術と成形加工~生物模倣から革新的技術へ~
    • 招待講演
  • [図書] 動物学の百科事典2018

    • 著者名/発表者名
      公益社団法人日本動物学会(編集)
    • 総ページ数
      800
    • 出版者
      丸善出版
    • ISBN
      978-4621303092
  • [産業財産権] 羽ばたき動作機構及び羽ばたき動作機構の使用方法、並びに、羽ばたき動作機構を用いた推進装置2018

    • 発明者名
      田中博人, 栢菅宏規
    • 権利者名
      国立大学法人東京工業大学
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-184512

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公開日: 2019-12-27  

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