計画研究
本年度は柔らかいゴムの上に有機太陽電池を作製するための準備段階として、溶液プロセスによる超薄型基板フィルムの作製及びその上への有機太陽電池の形成手法確立に取り組んだ。選んだ材料は透明ポリイミドであり、この材料は前駆体溶液を塗布後、250℃で焼成することにより架橋させるものである。成膜性と剥離性の両立を満たすために、支持体となるガラス表面エネルギーの調整を行った。従来のパリレンと同様に高撥液性を有するフッ素液高分子(Novec)を利用し、その膜厚を適切に制御した後に酸素プラズマ処理を行って改質するという2段階の表面処理を行った。その結果、透明ポリイミド前駆体溶液の成膜性と、加熱プロセス、素子作製後の剥離のすべてを可能にする条件を確立することに成功した。この基盤を用いて有機太陽電池を作製し、高いエネルギー変換効率と光に対する安定性を有することを見出した。上記の有機太陽電池を利用したアクチュエータ駆動応用に関する研究にも取り組んだ。駆動電圧、電流、変位等の要請を考慮し、市販のチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)をターゲットのアクチュエータとして設定した。それを有機太陽電池で駆動するための新たな回路構成を確立し、実際に有機トランジスタでのON/OFF制御、有機太陽電池を用いたトランジスタとアクチュエータへの電力供給を行うシステムを確立した。ファンクションジェネレータを用いて200Hzの交流信号を駆動トランジスタのゲートに印加し、ソース・ドレイン電圧及びアクチュエータ部分を有機太陽電池によって電力供給することで、PZTアクチュエータが5μmの変位量で駆動することを確認した。これは人体が近くするのに十分な周波数及び変位量であり、超薄型有機太陽電池を用いたアクチュエーションの原理実証が達成されたのみならず、それをウェアラブルデバイスへと適応可能であることを意味する。
2: おおむね順調に進展している
当初基板として利用予定であったポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いた有機太陽電池の研究には着手できていないが、それは分担研究者である藤枝の所属変更に伴う引っ越し・新規研究室立ち上げによるものである。今年度PDMS基板の作製を行うめどは立っているため、当初計画からの遅れはない。一方、他の溶液材料を利用した超薄型有機太陽電池の作製には成功しているため、本年度はPDMSナノシートの形成ができ次第、速やかに有機太陽電池の基板として利用する技術確立はすでにできている。それに並行して発展的なアクチュエータの駆動という実験にも成功しており、当初計画を鑑みるとおおむね順調に進展していると判断することができる。
PDMSの供給が開始され次第、速やかにPDMSナノシートを利用した有機太陽電池の作製に取り組む。PDMSの表面エネルギーが問題になる場合には、酸化プラズマ、UVオゾン処理等の表面エネルギーを上昇させる(撥水性をさげる)処理を行うことで、有機太陽電池を構成する高分子や電極材料が適切に製膜される状況を探索する。材料面では、PDMSの弾性を1枚のフィルム上で変更させるための技術について、スピンコートやグラビアコートなどの各種塗布成膜手法において検討を重ねる。上記と並行して、今後は有機太陽電池に印加しうる引張ひずみの最大値の評価と、構成する材料の中で最もその引張ひずみに影響を与えうる透明電極、インジウム酸化スズ(ITO)との関係性を精密に評価する。その後、ITO電極を他の透明電極に代替する、またはITOにパターンを施すことによりひずみを緩和させる手法のいずれか、または両方を採用し、最大ひずみに対する変化が起きるかどうかの評価を行う予定である。
すべて 2019 2018 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 7件、 招待講演 12件) 備考 (2件)
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