研究領域 | ソフトロボット学の創成:機電・物質・生体情報の有機的融合 |
研究課題/領域番号 |
18H05472
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 浩平 東京大学, 大学院情報理工学系研究科, 准教授 (10740251)
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研究分担者 |
竹井 邦晴 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20630833)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ソフトロボット / リザバー計算 / 物理リザバー計算 / 非線形力学系 |
研究実績の概要 |
本年度はソフトロボットのセンシングならびに自律制御に対して、リザバー計算ならびに物理リザバー計算の両方のアプローチを用いて研究を行った。まずセンシングに関して言うと、これまで通り、人工筋肉の長さ推定を高精度で実現できるリザバー計算に取り組んだ。また、やわらかいマテリアルを含めた連続体の姿勢推定を実現するために動画から連続体の中心線を抽出するアルゴリズムを開発し、現在、その中心線を動画からではなく、連続体内部に埋め込まれたセンサーとそれを入力として受けとるリザバー計算を使って、エミュレートする研究にとりかかっている。同様の発想で、流体を介したタッチセンサーの開発も行った。またリザバー計算とは少し離れるが、センシング課題として人工筋肉を活用した攪拌ポンプの内容物の混ざり具合を内部のセンサーとロジスティック回帰を組み合わせて推定するというタスクにも取り組んだ。次に、物理リザバー計算としては、飛翔ロボットの羽がリザバーとして機能することを発見し、ジャーナル論文として報告した。ここではフレキシブルセンサーを羽に埋め込み、その羽のダイナミクスをモニターすることでレザバーとして活用し、風向き推定が実現できることを明らかにした。また現在、フレキシブルセンサーを活用してやわらかい身体と環境の結合をうまく利用して、計算を空間的に離れた場所で実装する技術の開発に着手した。自律制御に関しては、高次元のカオスを実装したリザバーを上手く活用することで様々なリミットサイクルやカオス軌道そしてカオス的遍歴が設計可能となる手法を提案した。この手法は将来的に物理リザバー計算の形で導入される予定である。本年度は物理リザバー計算の簡単な総説をソフトロボットの観点から執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はリザバー計算ならびに物理リザバー計算を用いたセンシングと自律制御を実装することを目的とした。結果として、こちらが想定していなかった様々な結果を得ることができた。まず、フレキシブルセンサーを水の中で激しく動かす実験を繰り返し行うことでやわらかいマテリアルと水の結合を使って入力の影響が離れた場所にある物体にも伝わり、一般化同期することで計算資源として活用できることがわかった。この結果は現在論文にまとめている段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今後はフレキシブルセンサーを導入した物理リザバー計算を用いて、引き続き各種ソフトロボットにおけるセンシングならびに自律制御の実装を目指す。特に本年度論文として発表した高次元カオスを活用したリザバー計算とやわらかいマテリアルのダイナミクスが組み合わさった際にどのような特性が生じるかに関して詳しく解析を行う予定である。この解析は脳にカオスが発見されることと生物の身体がやわらかいことの間に何かしら不変的な関係が存在することを明らかにするかもしれない。
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