計画研究
本年度は、リザバー計算・物理リザバー計算、両方の手法に関して、全般的に進捗があった。特に、リザバーの計算能力を定量する情報処理容量という指標に関しての理論的な知見が多く集まった(特に、時変、時不変の情報処理容量の区別やそれとecho state propertyという概念との関係など)。実装に関しては、まず、通常のリザバー計算に基づいて、これまで、センサーのエミュレーション、つまり、いわゆるindirect sensingを行ってきたが、本年度はこの手法に対して新たにphysics-informed machine learningの手法を導入し、性能向上を実現した。物理リザバー計算に関して、まずopen-loopの設定に関しては、新たな物理リザバー(渦、ウレタン、服、細胞集団など)を複数提案した。渦を用いた物理リザバー計算に関しては、上述した時変の情報処理容量の寄与を議論した。また、フレキシブルセンサーを導入したシリコン角材を用いて、環境中の物体で入力に対して一般化同期するものをad hocに物理リザバーとして活用する手法を提案し、これをremote reservoirと呼び、その計算能力を定量した。ここでも情報処理容量の解析が威力を発揮した。closed-loopの設定に関しては、魚ロボットを構築し、物理リザバーの手法に基づいて自律駆動できることを示した。
2: おおむね順調に進展している
本研究課題が目標とするフレキシブルセンサーの導入によるリザバー計算ならびに物理リザバー計算の情報処理限界の突破に関し、各方面で徐々に実現してきている。具体的には、センサーのエミュレーションや閉ループによるロボット制御が顕著な例である。さらに、物理リザバーの境界を動的に変質させ、これまで計算に使う想定になかった環境中の物体のダイナミクスを計算資源として活用するという物理リザバーの情報処理技術自体の発展にも貢献がある。この点は、研究遂行前には予想していなかった点で、研究を行ってみてはじめて発見した知見が基となっている。
今後は、現状のまま、すべての項目について進捗を積み重ねる予定である。特に、物理リザバー計算のclosed-loopの設定における研究を重点的に進められればと考えている。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 9件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 7件) 図書 (1件)
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