研究領域 | ミルフィーユ構造の材料科学-新強化原理に基づく次世代構造材料の創製- |
研究課題/領域番号 |
18H05476
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
山崎 倫昭 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 教授 (50343885)
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研究分担者 |
河村 能人 熊本大学, 先進マグネシウム国際研究センター, 教授 (30250814)
奥田 浩司 京都大学, 工学研究科, 教授 (50214060)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | マグネシウム合金 / 長周期積層構造 / ミルフィーユ構造 / キンク変形 |
研究実績の概要 |
本計画研究では、経験的ミルフィーユ条件を満たす硬質層の稀薄層状分散構造Mg合金の創製と特性発現条件・機構の理解を通して、ミルフィーユ構造(MFS)の強化理論確立と材料創製による学理構築を目指すことで領域の深化に貢献することを目的とする。具体的には、(1)通常場を用いたMFS物質創製において、(1-1)成分設計・加工熱処理制御による材料創製、(1-2)相変態・析出制御技術の確立を行う。(2)非平衡場を用いたMFS物質創製において、(21)超急冷制御による過飽和固溶体を介したMFS形成技術の確立、(2-2)溶融塩プロセス制御による新規非平衡物質合成を行う。更には大型量子線その場回折・散乱を用いた(3)最適プロセス経路の選択原理の実験的探索を実施し、MFS制御技術の高度化と高効率化を図ることとする。 2021年度は、(1-1)成分設計・加工熱処理制御においては、Mg-Zn-Y系希釈合金を対象として超徐冷プロセスおよび通常場での熱処理を適用し、MFS領域形成に適した条件を探るとともに、MFS中のCluster-Arranged Layers (CALs)の分散状態の定量的表現を試みた。(2-1)超急冷制御では、Mg-Zn-Y系合金へ急冷プロセスと所定の溶体化・時効熱処理、低押出比による急冷薄帯固化成形を組み合わせることでMFS領域の形成促進を図るとともにCALsの分散度制御を行なった。(2-2)溶融塩プロセス制御では、前年度に引き続き、Mg-Tiの共析出する電析条件の探索を行った。(3)最適プロセス経路の選択原理の実験的探索では、希薄MFS試料のプロセス設計のための組織形成過程の理解という観点から希薄Mg-Y-Zn合金の小角高角同時測定法、分光法を組み合わせた組織解析と、よりスケール領域を広げた組織評価法としての散乱トモグラフィー法の開発をおこなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)通常場を用いたミルフィーユ構造(MFS)物質創製では、(1-1)成分設計・加工熱処理制御において、Mg-Zn-Y系希釈合金へ超徐冷プロセスを適用することで、MFS形成挙動を制御可能であることを示した。 更に、MFS中のCluster-Arranged Layers (CALs)の分散状態を定量的に評価するに至った。(1-2)相変態・析出制御技術については、Mg-Sc系合金においてbcc母相粒中に多数の析出hcp相が一方向に成長した層状組織を得ることに成功した。 (2)非平衡場を用いたMFS物質創製では、(2-1)超急冷制御において過飽和固溶体を介したMFS形成に成功しており、更には低押出比による急冷薄帯固化成形プロセスを適用することで押出中の再結晶を抑制したキンク導入組織の作り込みにも成功している。(2-2)溶融塩電気化学プロセスを用いることで新規非平衡物質合成を行い、Mg-Tiの共析出する電析条件を明らかにした。(3)最適プロセス経路の選択原理の実験的探索では、放射光を中心としたその場測定法によって非周期型LPSOの形成過程に関する解析を実施しているが、高濃度Mg85Y9Zn6合金のみならず、希薄Mg-Y-Zn合金の小角高角同時測定法、分光法を組み合わせた組織解析と、よりスケール領域を広げた組織評価法としての散乱トモグラフィー法の開発が順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1)通常場を用いたミルフィーユ構造物質創製 (1-1)成分設計・加工熱処理制御:硬質層分散型hcp/fcc層状稀薄Mg合金の開発を継続する。Mg-Zn-(Y, Gd)系希釈合金を対象として超徐冷プロセスおよび通常場での熱処理を適用してミルフィーユ構造(MFS)領域形成に適した製造条件を探るとともに、MFS中のCluster-Arranged Layers (CALs)の分散状態の定量的解析手法を更に高精度化していく予定である。(1-2)相変態・析出制御技術:bcc/martensite層状Mg合金の開発を再開し、開発合金の機械的特性評価、キンク形成挙動の調査を行う。 (2)非平衡場を用いたミルフィーユ構造物質創製 (2-1)超急冷制御:急冷法で過飽和固溶体の実現とMFSの制御技術の開発を継続する。また、低押出比による急冷薄帯固化成形プロセスを適用することで再結晶を抑制したキンク導入組織を持つ合金の開発を推し進めることで、今後、MFS構造単相材のキンク強化を、動的再結晶による結晶粒微細化の効果と区別して議論できるようにしたい。(2-2)溶融塩プロセス制御:これまでのTiおよびMgの単独析出系に関する知見を用いて、電解電流(電位)をパルス変調する手法によるMg/Ti層状構造膜の形成技術を確立する。 (3)最適プロセス経路の選択原理の実験的探索 MFS形成のキネティクスの変化に関して、特に希薄Mg-Y-Zn合金を対象として、小角高角同時測定法と分光法を組み合わせた組織解析と、よりスケール領域を広げた組織評価法としての散乱トモグラフィー法の開発を進める。(1-1)の徐冷凝固によるMFS形成技術の確立および、(2-1)の超急冷制御による過飽和固溶体を介したMFS形成技術の確立に関する研究と連動して、非周期型の積層秩序の観点からのMFS材料形成過程についての評価手法を確立する。
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