計画研究
これまで、植物が機械刺激を内生発生プログラムに反映し利用している可能性については、ほとんど議論されていない。多くの植物発生研究者が、研究手法の確立した分子生物学的・遺伝学的研究を行っている状況の中で、植物を対象とした張力測定や張力の人為的なコントロールといった機械刺激を扱う実験手法が確立されてこなかったことがその要因である。本研究では、植物がもつ2種類の構造システム形成戦略、(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システム、および、(2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システム、を読み解くことで、機械刺激が植物の形態形成を制御し、力学的構造最適化を図るしくみを明らかにする。研究項目(1)では、奈良先端大の細川と協働し、領域内のサステナブル構造システム教育研究支援センター(SSSC、奈良先端大)にAFMによる測定系を立ち上げた。これにより、植物表面の張力測定が可能となった。一方、clv3 det3突然変異体の抑圧変異体のスクリーニングを行い、候補突然変異体を単離した。さらに、根の表面における張力の測定のため、AFMを用いた実験系の開発を行った。現在の所、根は細く、滑りやすいので、AFM測定のために根を固定する方法を開発する必要があると考えられる。研究項目(2)では、植物が引き抜かれる力に抗う根の構造と機能を明らかにするために、本年度は、X線CTスキャンを用いた解析方法を確立した。地中の根のみを検出し、根の構造を抽出することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
植物が機械刺激を内生発生プログラムに反映し利用している可能性について研究を進めているが、なかでも、力学的な測定、X線CTスキャンを用いた地中の測定が必要不可欠な技術となってくる。本年度は、少なくとも茎、及び地上部のAFMでの測定を可能とし、地上部の表面の堅さ測定が、ミクロレベルで行う事が可能となった。これにより、細胞レベルでの堅さの分布が測定可能となった。また、X線CTスキャンにより、地中の根の3次元構造を可視化する事が可能となった。また、引っ張り試験機を導入し、X線CTスキャンと組み合わせることで、根の3次元構造と引っ張り力に抗う力との関係性を明らかにする実験系が確立できた。
本研究では、植物がもつ2種類の構造システム形成戦略、(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システム、および、(2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システム、を読み解くことで、機械刺激が植物の形態形成を制御し、力学的構造最適化を図るしくみを明らかにする。研究項目(1)では、AFMによる、地上部の堅さ測定が可能となったことから、clv3 det3突然変異体や、その抑圧変異体の力学的特性を調べることが可能となった。また、スクリーニングにより得られた候補突然変異体の解析を進め、原因遺伝子の特定を目指す。さらに、根を材料としたAFM実験系の開発については、材料工学の研究者と共同研究を始めることで、AFM測定のために根を固定する方法を開発する。研究項目(2)では、本年度、X線CTスキャンを用いた解析方法を確立した。今後は、引っ張り試験機を導入し、X線CTスキャンと組み合わせることで、根の3次元構造と引っ張り力に抗う力との関係性を明らかにする。
すべて 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち国際共著 5件、 査読あり 9件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)
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