計画研究
これまで、植物が機械刺激を内生発生プログラムに反映し利用している可能性については、ほとんど議論されてこなかった。多くの植物発生研究者が、研究手法の確立した分子生物学的・遺伝学的研究を行っている状況の中で、植物を対象とした張力測定や張力の人為的なコントロールといった機械刺激を扱う実験手法が確立されてこなかったことがその要因である。本研究では、植物がもつ2種類の構造システム形成戦略、(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システム、および、(2)重力を含む機械刺激による根系形成の最適化戦略システム、を読み解くことで、機械刺激が植物の形態形成を制御し、力学的構造最適化を 図るしくみを明らかにする。研究項目(1)では、研究分担者のFerjani Aliらと共同研究を行っている。2020年度に単離した、clv3 det3突然変異体の抑圧変異体について、その原因遺伝子を同定した。このことにより、茎のタガによる茎の内部発生に関わる分子機構の一端が明らかとなった。また、clv3 det3突然変異体を用いて、茎の表皮がタガとして機能し、内部構造の発生を制御していることを明らかにして、論文として報告した。研究項目(2)では、植物が引き抜かれる力に抗う根の構造と機能を明らかにするために、シミュレーション解析を行うことで、そのメカニズムについて調査した。また、そのシミュレーション解析の結果を受け、wetな実験を行い、引っ張り試験機などを組み合わせて、そのシミュレーション結果について、検証した。
2: おおむね順調に進展している
植物が機械刺激を内生発生プログラムに反映し、利用している可能性について研究を進めているが、なかでも、力学的な測定、x線CTスキャンを用いた地中の測定が必要不可欠な技術となってくる。2021年度には、x線CTスキャンを用いて土中の根系構造を可視化する技術を開発し、論文として報告できた。また、新たにシミュレーション解析を導入し、様々な角度からの研究を開始することが可能となった。
(1)表皮のタガとしての機能と内部構造の最適化戦略システムの解明を行っている。線虫感染後の根瘤形成時に、根に形成された根瘤の表皮がはがれることから、やはり、根でも表皮がタガになっていると考えられる。そこで、根の表皮内部組織の根瘤形成の度合を遺伝学的に調節し、根の内部発生と表皮との力学的な関係をより詳細に調べるために、イネを用いて根瘤形成に関わる遺伝子の同定をめざす。現在、候補遺伝子の抽出ができているので、今年度は、日本晴に線虫抵抗性遺伝子を導入し、線虫抵抗性を評価することで、線虫抵抗性遺伝子を確定する。また、他の単子葉植物にも、同様の機能が適応出来るかを調べるために、ミナトカモジグサを用いた形質転換体の作成を試みる。(2)重力等の機械刺激による根系最適化戦略システムの解析植物種により根系(根の張り具合に関するパターン)は決まっている。この解析では、この根系が、重力等の機械刺激により、どのように調節されているか、どのような機械刺激、重力刺激により、どのように根系を改変し対応するのか、その分子メカニズムはどうなっているか、を明らかにする。土壌の硬さに応じて、根の土壌への侵入が制御されている。硬い土壌には根は侵入せず、地上に露出してしまう。この現象について、シミュレーションなども用いて、ドライな解析を導入することで、種子根が重力刺激に従って根を土中に侵入させる際に、土中に侵入出来るかどうかの可否を決定する力学的条件を明らかにし、論文として報告する。また、根瘤形成時にその根瘤形成空間を制限できるマイクロデバイスを開発し、根瘤形成空間を制限したときに、根の内部構造がどのようになるかを明らかにする。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (22件) (うち国際共著 10件、 査読あり 22件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 2件)
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