研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
18H05489
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
出村 拓 奈良先端科学技術大学院大学, デジタルグリーンイノベーションセンター, 教授 (40272009)
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研究分担者 |
西谷 和彦 神奈川大学, 理学部, 教授 (60164555)
大谷 美沙都 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (60435633)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 原子間力顕微鏡 / 細胞壁パターン / 重力屈性 / マイクロフォーカスX線CT / 数理モデル |
研究実績の概要 |
(1)構造力学的アプローチによる細胞壁マイクロドメイン化メカニズムの解明○木部道管細胞の分化誘導系を利用して、分化中の細胞への機械刺激(圧縮、過重力)が二次細胞壁のパターン形成に関与することを明らかにした。この結果は隣接する細胞間での力学的な相互作用のバランスによって成り立っていることを示唆している。また、FMによる植物細胞形状と機械的強度の計測システムの改良を行った。 (2)重力屈性・あて材形成に見る力学的最適化戦略の解明○ユーカリ・ニテンス(Eucalyptus nitens)を材料として、側枝形状や力学的なパラメータ(側枝の長さや角度、曲率)の定量的解析を行った。まず、側枝の角度として定義した「基部角度」と「先端角度」の差をもとに、(1)角度の差が小さく直線に近い側枝、(2)角度の差が小さいが側枝内で大きく変形がある側枝、(3)角度の差が大きい側枝の3つに、側枝形状を分類した。また、力学的な定量パラメータとして、側枝に加わる重力方向の荷重を測定し、荷重と節間の長さの測定結果を元に、各節間の基部にかかる曲げモーメントを算出した。さらに、側枝の内部構造を、マイクロフォーカスX線CTを用いて観察し、曲げモーメントとの比較を行った。その結果、曲げモーメントの値が約100μNm以上の節間で二次木部の発達、約1000μNm以上の節間であて材の形成が確認できた。 (3)植物器官新生における細胞壁の可塑的制御による力学的最適化の解明○概日リズムや光周性にしたがった周期的な葉柄運動について、マイクロフォーカスX線CTを用いた非破壊的な3D形状の可視化技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)構造力学的アプローチによる細胞壁マイクロドメイン化メカニズムの解明○分化中の木部道管細胞への機械刺激(圧縮、過重力)が二次細胞壁のパターン形成に関与することに成功した。また、FMによる植物細胞形状と機械的強度の計測システムを改良できた。 (2)重力屈性・あて材形成に見る力学的最適化戦略の解明○ユーカリを材料として、側枝形状や力学的なパラメータ(側枝の長さや角度、曲率)の定量的解析を行い、曲げモーメント、二次木部発達、あて材形成の関連を確認できた。 (3)植物器官新生における細胞壁の可塑的制御による力学的最適化の解明○マイクロフォーカスX線CTを用いた非破壊的な3D形状の可視化技術の確立に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、細胞壁の特殊化を構造力学的に読み解くことで、サステナブル構造システムモデルに投影可能な植物の力学的最適化戦略を抽出する (1)構造力学的アプローチによる細胞壁マイクロドメイン化メカニズムの解明○道管細胞分化の人為的誘導系を用いて、二次細胞壁沈着過程における細胞の機械的強度や物理的特性変化の詳細解析を継続する。○隣り合った道管が二次細胞壁沈着の位置を同調させる構造力学的プロセスを記述するために、外部からの機械的刺激を与えたときのシミュレーションについて検討する。 (2)重力屈性・あて材形成に見る力学的最適化戦略の解明○引き続き、重力屈性とあて材形成の過程の構造力学的理解のために、ユーカリ側枝などを材料に非接触型3次元画像・組織構造・力学特性データを時系列で取得し、4D構造システムのシミュレーション解析に着手する。さらに組織・細胞レベルの高解像度トランスクリプトーム解析システム(Visium)の利用の検討を継続する。 (3)植物器官新生における細胞壁の可塑的制御による力学的最適化の解明○引き続き、組織培養系のカルスからのシュート再生における、細胞張力測定系の構築に着手する。
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