植物は外力(力学的刺激)を受容して、自立的かつダイナミックに生体構造を変化させる(力学的最適化戦略)。この力学的最適化戦略は、持続可能な(サステナブル)社会・資源・建築を実現するために重要な能力であるが、その根幹を成す植物の力学的刺激受容機構は明らかになっていない。本研究では、外力によって発生する張力およびカルシウムシグナルを可視化するイメージング技術を開発し、植物の力学的刺激受容・フィードバック機構を解明する。さらに、これらの新しい技術を用いて、生きた植物の構造力学的パラメーターを取得し、力学的最適化を可能にする植物の原理を抽出することで、次世代のサステナブル建築構造モデルを構築する。 今年度は、ポータブル蛍光カメラシステムを用いた大型植物の機械刺激応答の研究およびGFP型張力センサーの開発を行った。ポータブル蛍光カメラシステムは、50 cm x 50 cmの広い視野で、様々な角度から試料を撮影することができる。この特徴を活かし、通常の蛍光顕微鏡では観察が難しい大型植物であるオジギソウの接触刺激応答性のカルシウムシグナルおよび葉の閉合運動のリアルタイムイメージングに成功した。これらのイメージング技術に分子遺伝学的手法を組み合わせることで、植物の機械刺激感知(センサー)および高速運動(アクチュエータ)機構の一端が明らかになった。 これまでin vitroや培養細胞系でスクリーニングを進めてきたGFP型張力センサーの細胞壁結合ドメインを改変することで、セルロース微繊維に特異的に結合する新規バイオセンサーを構築した。さらに蛍光タンパク質ドメインを改変することで、酸性条件下においても消光しづらくなり、アポプラスト領域での安定性が飛躍的に向上した。この新規バイオセンサーをシロイヌナズナに発現させたところ、in vivoで細胞壁動態をリアルタイムイメージングできることが明らかになった。
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