研究領域 | 植物の力学的最適化戦略に基づくサステナブル構造システムの基盤創成 |
研究課題/領域番号 |
18H05493
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
細川 陽一郎 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (20448088)
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研究分担者 |
安國 良平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40620612)
三村 徹郎 神戸大学, 理学研究科, 教授 (20174120)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 原子間力顕微 / フェムト秒レーザー / フォースマッピング / 顕微細胞操作 / 液胞制御 |
研究実績の概要 |
AFMにより植物個体を適切に評価するための試料の固定方法について、従来まで用いられてきた接着剤、両面テープによる固定方法に加え、フォトリソグラフィーとウエットエッチングにより作製したガラス製のマイクロピラーチップを作製した。このマイクロピラーチップのピラーの間にシロイヌナズナの根を伸長させることに成功し、さらに伸長した根はピラーに絡まりしっかりと固定された。この方法では、接着剤、両面テープなどと異なり、根の成長は阻害することはなく、成長するシロイヌナズナの根の日単位の弾性応力の変化をAFMにより検出することができるようになった。 さらに超長作動対物レンズを用いた光学システムをAFMと組み合わせ、AFM探針側から細胞表面を細胞レベルで観察しながら測定対象となる細胞にフェムト秒レーザーを集光照射し、細胞表面の弾性・塑性できるシステムを構築した。このシステム構築により、植物生理の研究で広く用いられているシロイヌナズナを対象として研究を進められるようになった。フェムト秒レーザーを細胞壁に照射することにより、細胞内の膨圧を緩和させることに成功し、膨圧に依存しない細胞壁の弾性応力を評価することができた。その結果、植物細胞の弾性評価には、これまでフォースカーブの解析に用いられてきたヘルツの理論に基づく方法が適さないことが分かり、植物細胞特有である細胞壁の壁構造を建築学に基づく物理からアプローチし解析しようとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に植物細胞のAFM計測を推進しているフランスの研究グループを訪問し、ここで植物個体を接着剤もしくは両面テープにより顕微鏡に固定してAFM計測を行うことにより計測する技術指導をうけた。しかしこの方法では、基板に植物個体を接着することによりその成長を妨げるため、日単位の長期間で同一試料の評価ができないことが分かった。そこで、これまで我々が培ってきた、ガラスの微細加工技術を適用し、マイクロピラーチップを作製し、試料を固定することを考案し、その方法で従来方法を上回る性能で植物細胞の弾性応力の変化を計測できるようにした。この方法は、共同研究を実施している出村、藤原、澤、小竹グループなどに注目されており、今後シロイヌナズナの試料提供を受け、その評価を推進していくことを予定している。 また、前年度、超長作動対物レンズの納品が遅れ、若干の計画の遅れが生じていたが、AFM探針側から細胞表面を細胞レベルで観察しながら測定対象となる細胞にフェムト秒レーザーを集光照射装置を順調に構築できた。この装置により、従来方法では適用できなかったシロイヌナズナの上皮細胞にフェムト秒レーザーを集光照射できるようになり、そのレーザー照射前後の細胞の弾性応力の変化より、膨圧によらない細胞壁の弾性応力を評価することができた。その弾性応力が示した結果は、当初の予測とは異なるものであり、従来までの解析に用いられてきたヘルツの理論に基づくものではなく、植物細胞特有の構造に由来することに帰結できるものであった。これらの研究により得られた知見は、本研究領域の趣旨に合致するものであり、計画は概ね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
細胞壁の物理モデルをAFMによる実験にて得られるフォースカーブと照合する方法を確立し、モデルの妥当性を示す。さらに、これまでの研究で生きた植物細胞の細胞壁のヤング率や張力の定量値は明確には示されていない。今後の研究では、実験データと物理モデルを照合することにより、これらの定量値を導出する手法の構築を目指す。この定量評価を実現するために、細胞壁を物理モデルに照合しやすくなるようにフェムト秒レーザーで加工し、AFM測定をおこなうことを新たに計画している。さらに、プレッシャープローブにより細胞内圧を調べる別方法と組み合わせていく。 超長作動対物レンズを用いたAFMを併用できるフェムト秒レーザー集光照射装置を構築できたことにより、植物生理の研究で広く用いられているシロイヌナズナを対象として研究を進められるようになった。これまでシロイヌナズナを用いた研究を推進している澤、森田、藤原、小竹らから、細胞壁の構造を改変した植物細胞の提供をうけ、AFMとフェムト秒レーザーを用いた実験をおこない、分子レベルの細胞壁構造の変化が、マクロレベルの細胞壁のヤング率や張力に如何なる影響を与えるかを明らかにしていく予定をしている。
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