計画研究
2019年度は、生合成(biosynthesis)レベルの実験としては、2018年度から引き続き、植物細胞壁の主成分であるセルロースがどのように結晶(セルロースナノクリスタル;CNC)化し、それがセルロースナノファイバー(CNF)化するのかを明らかにするとともに、植物細胞壁の生合成および生分解に関わる酵素の生産に力点を置いた。一方で、昨年度安定したセルロース合成実験に成功したセロデキストリン加リン酸分解酵素の逆反応を用いたCNCの生産系は、重力による影響を調べるために引き続き宇宙実験を試みる。昨年度はロシアでのロケット打ち上げ失敗とともにJAXAFS実験の不採択を受けて、本年度は有人宇宙システム株式会社(JAMSS)との共同研究によって宇宙におけるセルロース合成に取り組み成功させた。生分解(biodegradation)に関する実験としては、昨年度成果報告にたどり着いたセルラーゼによるCNCの分解挙動の完全シミュレーションを用いて、結晶型の影響やセルロース分子鎖の長さ依存性などを明らかにした。また、細菌由来のセルラーゼによるセルロース分解メカニズムを明らかにする実験にも取り組み、それらに関してin vitroとin silicoの実験を並行して進めた。さらに生改変(biomodification)実験としては、植物細胞壁のリモデリングに関与する酵素群によるCNCやCNFの変化観察に取り組み始めており、特にセルロース繊維の膨潤に関与する酵素としてエクスパンシンの特徴付けなどにも取り組む。
2: おおむね順調に進展している
昨年度計画していた宇宙ステーションでの微小重力実験の失敗を、JAMSSとの共同研究によって成功させた。
生合成(biosynthesis)レベルの実験としては、主に一昨年度、昨年度に引き続き、植物細胞壁の主成分であるセルロースがどのように結晶(セルロースナノクリスタル;CNC)化し、それがセルロースナノファイバー(CNF)化するのかを明らかにするとともに、植物細胞壁の生合成および生分解に関わる酵素の生産に力点を置く。本年度は動物の中で唯一セルロースを合成することが知られているホヤのセルロース合成酵素に関しても、研究を行う予定である。一方で昨年度安定したセルロース合成実験に成功しているセロデキストリン加リン酸分解酵素の逆反応を用いたCNCの生産系は、重力による影響を調べるために再度宇宙実験を試みる。昨年度のSpaceXによる成功を受けて、本年度は実験手法をさらに最適化して望む。生分解(biodegradation)に関する実験としては、昨年度成果報告にたどり着いたセルラーゼによるCNCの分解挙動の完全シミュレーションを用いて、結晶型の影響やセルロース分子鎖の長さ依存性などを明らかにする。また、細菌由来のセルラーゼによるセルロース分解メカニズムを明らかにする実験にも取り組み始めたことから、それらに関してin vitroとin silicoの実験を並行して進める予定である。さらに生改変(biomodification)実験としては、セルロース繊維の膨潤に関与する酵素としてエクスパンシンの反応性をさらに深く調べる。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件) 備考 (2件)
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https://www.a.u-tokyo.ac.jp/news/news_20200316-1.html
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20191216-1.html