計画研究
生合成(biosynthesis)レベルの実験としては、セロデキストリン加リン酸分解酵素(CDP)の逆反応によるセルロースナノクリスタル(CNC)の生成に対する重力の影響に注目してきた。酵素の不安定化原因となっていた12個のCysをSerに置換したCDPの逆反応を用いたCNCの生産系を用いて、重力による影響を調べるために再度宇宙実験を試みた。得られたセルロースの小角および広角X線散乱などを用いて作成された結晶の解析を行い、微小重力下では反応に用いたキャピラリー中で均一なゲルが生成していることを明らかにし、それらの成果がCellulose誌に掲載され、表紙を飾った。生分解(biodegradation)に関する実験としては、糸状菌によるキシラン分解の要となっている糖質加水分解酵素(GH)ファミリー3のキシロシダーゼに関して、担子菌Phanerochaete chrysosporiumおよび子嚢菌Trichoderma reesei由来の酵素の構造解析を行い、P. chrysosporium由来の酵素が2糖を得意とするのに対して、T. reesei由来の酵素が3糖以上のオリゴ糖に対して反応性が高い理由が、N末端のループに依存することを明らかにし、さらにキノコとカビではその違いに基づいて保有する上流のキシラナーゼ遺伝子の数が変動していることも明らかにした。それらの結果をJBC誌およびJ. Appl. Glycosci.誌に受理された。
1: 当初の計画以上に進展している
微小重力下での酵素合成に成功したセルロースを解析したところ、非常に均一なゲルであり、その結果をCellulose誌に投稿できたこと、さらにCellulose誌の表紙に選ばれたことは当初の計画以上の成果であった。
生合成(biosynthesis)レベルの実験としては、これまでにセルロース合成に用いてきたセロデキストリン加リン酸分解酵素(CDP)のタンパク質立体構造をクライオ電子顕微鏡解析によって明らかにし、セルロース鎖が蓄積していく様子を高速AFMと周波数変調AFMにより評価する予定である。生分解(biodegradation)に関する実験としては、木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporium由来の溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)によるセルラーゼ(Cel6A、Cel7D)活性の促進メカニズムを、生化学的解析、高速原子間力顕微鏡による生物物理学的解析、および分子動力学的シミュレーションによる計算科学的解析によって明らかにする予定である。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 11件) 備考 (1件)
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