計画研究
生合成(biosynthesis)レベルの実験としては、これまでにセルロース合成に用いてきたセロデキストリン加リン酸分解酵素(CDP)のタンパク質立体構造をクライオ電子顕微鏡解析によって明らかにし、セルロース鎖が蓄積していく様子を高速AFMと周波数変調AFMにより評価した。構造解析の結果、CDPの二量体は開閉運動を行う動的な構造を有しており、開閉運動が合成されたセルロース分子鎖の放出をコントロールする可能性を示した。またAFMによる解析では酵素で合成されたセルロース分子鎖が互いに向き合った二分子単位で蓄積し、結晶へと至る過程を観測した。この二分子単位のセルロース分子鎖はCDPの二量体構造内で形成されうるセルロース分子鎖のパッキングと類似しており、CDPの多量体構造そのものが合成されるセルロースの形態を決定づけている可能性を示唆した。生分解(biodegradation)に関する実験としては、木材腐朽菌Phanerochaete chrysosporium由来の溶解性多糖モノオキシゲナーゼ(LPMO)によるセルラーゼ(Cel6A、Cel7D)活性の促進メカニズムを、生化学的解析、高速原子間力顕微鏡による生物物理学的解析、および分子動力学的シミュレーションによる計算科学的解析によって明らかにし、酸化されたセルロース鎖周辺で結晶性セルロースの非晶化が起こることが、分解促進の機構であることを明らかにした。本結果は、セルロース分解の分野で長年にわたって議論されてきたC1-Cx説、Endo-Exo説、oxidative boostが、実は同じ現象を違う側面から見ていたことを示しており、70年にわたるセルロース分解機構の議論に結論づける成果となった。本結果はScience Advances誌に公表された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 6件) 備考 (1件)
Carbohydr. Polymers
巻: - ページ: -
10.1016/j.carbpol.2023.120976
Science Adv.
巻: 8 ページ: eade5155
10.1126/sciadv.ade5155
Reaction Chemistry & Engineering
巻: 7 ページ: 2629-2635
10.1039/D2RE00202G
https://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/topics_20221224-1.html