計画研究
本研究では、植物体の優れた物理的性質に寄与する細胞壁成分のはたらきを調べた。アラビノガラクタン-プロテイン(AGP)は植物の細胞外プロテオグリカンであるが、糖鎖の働きがよくわかっていない。またペクチンは細胞接着を介した組織形態の制御への関与が指摘されてきた。本研究ではAGPの糖鎖とペクチンのラムノガラクツロナン(RG)-Iの植物体物性への寄与を明らかにすることを目指した。AGPの糖鎖であるAGは構造が多様であるが、(i) 糖鎖主鎖がβ-1,3-ガラクタンであること、(ii) 糖鎖側鎖にβ-1,6-ガラクタンをもつこと、は共通している。本研究ではまず、真菌由来の特異的な酵素分解を利用し、側鎖の頻度や側鎖長の分布が植物種を超えて保存されていることを明らかにした。またAGの特定糖鎖がin vivoで破壊されるシロイヌナズナを作出したところ、主鎖β-1,3-ガラクタンの破壊で著しい成長阻害と組織形態が観察された。また主鎖β-1,3-ガラクタンを破壊せずに長いβ-1,6-ガラクタン側鎖を特異的に分解しても顕著な成長阻害が起こった。これらの植物ではセルロース量が減少し、胚軸の細胞壁物性が顕著に変化していた。以上から、AGPの糖鎖はセルロース合成を介して細胞壁物性に寄与することが示唆された。急速な細胞成長が起こる暗所胚軸で、RG-Iのアラビナン側鎖が異常なarad2変異体とRG-IIが異常なmur1変異体の胚軸の細胞壁物性を引張試験により調べたところ、どちらも野生型植物と比べてゆっくり破断されることがわかった。mur1変異体で表皮細胞の剥離や細胞列の乱れなどの異常がみられ、arad2変異体でも程度は弱いものの同様の異常がみられた。RG-IとRG-IIには少なくとも部分的な機能重複があり、細胞接着や細胞形態制御により、胚軸の細胞壁物性に影響していることがわかった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件)
Frontiers in Plant Science
巻: 13 ページ: 1008725
10.3389/fpls.2022.1008725
Theor. Appl. Genet.
巻: - ページ: -
Carbohydr. Res.
Development
巻: 149 ページ: dev200370
10.1242/dev.200370
巻: 13 ページ: 1010492
10.3389/fpls.2022.1010492
Physiologia Plantarum
巻: 175 ページ: e13837
10.1111/ppl.13837
The Plant Journal
巻: 109 ページ: 1152~1167
10.1111/tpj.15620
Metabolomics
巻: 18 ページ: 95
10.1007/s11306-022-01958-9
Biomass Conv. Bioref.
巻: 12 ページ: 2349-2367
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 86 ページ: 1413~1416
10.1093/bbb/zbac120