計画研究
植物は,光や重力などの環境変化に応じて,茎や根をはじめとした器官の成長方向を変化させ,屈曲させる性質をもつ.一方で,植物の器官はまっすぐに伸びる性質をもっており,一旦屈曲した器官をまっすぐに復元することができる.この復元力には過剰な器官屈曲を抑制する役割があり,植物は屈曲と復元のバランスを取ることで,姿勢を力学的に安定化させていることがわかってきた.しかし,植物が姿勢復元力を発動するしくみはほとんど明らかになっていない.われわれは,アクチン繊維を構成するACTIN8に点突然変異をもつシロイヌナズナfrizzy1 (fiz1) 顕性変異体が,姿勢復元力に欠陥をもつことを報告してきた.そこで,花茎の姿勢復元においてアクチン細胞骨格が必要とされる組織を探索するために,変異型アクチンFIZ1のドミナントネガティブ効果を利用した.さまざまな遺伝子のプロモーター制御下で,緑色蛍光タンパク質 (GFP) を融合したFIZ1-GFPを発現させることで,部位特異的にアクチン繊維の機能を阻害したシロイヌナズナ形質転換体を作出した.形質転換体のうちいくつかの系統は,fiz1変異体に類似した姿勢異常を示し,花茎や花柄をはじめとした伸長器官が過剰に屈曲した.花茎に着目してクリノスタット解析を行った結果,姿勢異常を示した系統はいずれも野生型と比較して著しい姿勢復元力の低下を示した.共焦点レーザー顕微鏡を用いたFIZ1-GFPの観察から,姿勢復元力の低下を引き起こした系統間で共通してFIZ1-GFPが発現する細胞の絞り込みを行った.以上の結果から,植物の姿勢復元力は,器官の一部の組織におけるアクチン細胞骨格によって制御されていることが明らかとなった.
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 2件)
Nature Communications
巻: 13 ページ: 7493
10.1038/s41467-022-35138-z