ユビキチン修飾は、タンパク質分解のシグナルとしての役割にとどまらず、多様な細胞機能に必須な役割を担う。ユビキチン自身も修飾の対象であり、7ヶ所のリジン残基(K6、K11、K27、K29、K33、K48、K63)とN末端メチオニン(M1)のアミノ基を介して数珠つなぎになったユビキチン鎖として機能する例も多い。近年では、異なる鎖が混在する鎖(混合鎖)や、途中で分岐した鎖(分岐鎖)の存在に加えて、リン酸化などの翻訳後修飾がユビキチンに起こることも明らかになり、ユビキチン修飾系は想定を超えた複雑さを呈してきている。本研究では、特定のユビキチン鎖を選択的に認識するユビキチン結合ドメインや脱ユビキチン化酵素の立体構造解析により、新規の鎖タイプ選択的な認識機構を解明する。また、研究領域内で創出される機能性化合物の作用機構解明に必要な立体構造解析を行う。 プロテアソーム分解系でK48鎖を認識するNpl4は、Ufd1と共に、unfoldase活性を持つ六量体ATPase p97/Cdc48のコファクターとして機能する。ヒトNpl4とUfd1との相互作用の阻害は、プロテアソーム阻害と同様にがんを抑える可能性が考えられる。これまでに、公募研究の静岡大・鳴海博士との共同研究でヒトUfd1のヒトNpl4結合領域に由来する阻害ペプチド化合物を設計・合成して、ヒトNpl4への結合活性を解析してきた。今年度は、公募研究の鳥取大・佐藤博士との共同研究で、ヒトp97-Ufd1-Npl4複合体のunfoldase活性に対する阻害能を非標識の化合物で測定する系を確立し、いくつかのペプチド化合物が実際unfoldase活性の阻害能を持つことを明らかにした。また、オートファジー関連のユビキチンシグナルに関わる分子群の機能解析が進んでおり、その分子機構を裏付ける構造解析を進めた。
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