計画研究
ケミカルプロテインノックダウン技術の開発と拡充では、リガンドにデコイ核酸を利用することで転写因子の分解を可能にする核酸型SNIPERの開発に成功した。また、高活性・高選択的にプロスタグランジンD合成酵素(HPGDS)を分解誘導できる低分子型PROTACの開発に成功した。神経変性疾患の一種であるハンチントン病の原因タンパク質を分解誘導するSNIPERの構造を疎水性タグ連結化合物に改変し、この化合物が脳内移行性を示すことを示した。また共同研究によりユビキチンリガーゼとそのリガンドの結合様式を解析し、その情報を元に新たなSNIPERを合成した。標的タンパク質分解分子に利用できるE3ユビキチンリガーゼを増やすため、これまでPROTACに利用されていないE3のリガンドとのキメラ分子を合成した。難治性のすい臓がんではCRABP-IIの発現が高くゲムシタビンに耐性を示すが、CRABP-IIを分解するSNIPERが難治性すい臓がんの薬剤耐性を克服することを見出した。がん特異的融合タンパク質FGFR-TACC3を分解するSNIPERを開発し、FGFR-TACC3陽性のがん細胞に選択的な細胞死を誘導することを見出した。サリドマイドが誘導する血管新生阻害関連CRBNネオ基質の下流機構の解析では、プロテオミクスおよびトランスクリプトーム解析を行った結果、ネオ基質の下流因子を明らかにした。またCC-122のDLBCL増殖抑制効果についてもトランスクリプトーム解析により下流においてTNFαシグナリングが動くことなどが示唆された。またサリドマイド誘導体であるポマリドミドの誘導するCRBNネオ基質にPLZFおよびPLZF融合タンパク質があることを発見した。
2: おおむね順調に進展している
中分子化合物を利用したタンパク質分解誘導剤開発では、リガンドにデコイ核酸を利用することで転写因子の分解を可能にする核酸型SNIPERの開発を達成でき、ケミカルプロテインノックダウン技術の適応範囲拡大に繋げることができた。また、HPGDSを標的とした低分子型PROTAC開発では、in vivoで有効性を示す化合物を見出した。またがん特異的融合タンパク質を分解するSNIPERや、難治性がんの薬剤耐性を克服するSNIPERを開発した。ケミカルプロテインノックダウン技術を創薬に応用するためには、キメラ化合物の組織移行性を制御することは重要である。今年度は神経変性タンパク質を分解し脳内移行性を示す化合物を創製することに成功した。サリドマイドによる血管新生阻害の分子機構については、血管新生経路におけるCRBNおよびネオ基質の下流因子が明らかになる等、詳細な分子機構が明らかになりつつある。またCC-122によるDLBCLの増殖阻害機構についても下流の詳細が明らかになり理解が進展している。またポマリドミドの誘導するネオ基質PLZFおよび融合タンパク質分解の機構や意義も本年度で明らかにできた。以上のことから、研究は順調に進展していると考えている。
中分子化合物を利用したタンパク質分解誘導剤開発では、BRAFを標的としたペプチド型SNIPER開発を行う。また、昨年開発したデコイ核酸型SNIPERの構造最適化、DDS技術、アプタマー型SNIPERを開発する。低分子化合物を利用した標的タンパク質分解誘導剤の開発では、固相法による迅速・簡便なSINPER合成法の開発、および、プロスタグランジンE合成酵素等を標的とした分解誘導剤の開発を行う。標的タンパク質分解分子に利用できるE3ユビキチンリガーゼを増やすため、これまでPROTACに利用されていないE3のリガンドとのキメラ分子の合成を継続する。E3ユビキチンリガーゼとリガンドの構造情報を精査し、濃度依存的に分解活性を示すSNIPERの創製を継続して検討する。PROTAC技術を応用して、標的タンパク質同定を目指す。サリドマイドによる血管新生阻害機構は大方判明したので、次年度はその成果をまとめるための統合的な解析を行う。サリドマイドにより分解が引き起こされない変異体CRBNネオ基質を発現する血管内皮細胞株の利用により、前年度に明らかにした下流シグナル伝達の作用における重要性を改めて検討する。またCC-122の分子機構についても、研究成果をまとめるべく、CRBNネオ基質および下流因子候補と薬剤作用との関係性を検証することを計画している。領域内共同研究として、ユビキチンコード作動機構解析用のケミカルプローブの開発を行う。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 1件、 査読あり 21件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (54件) (うち国際学会 6件、 招待講演 14件) 図書 (2件) 備考 (4件) 産業財産権 (1件)
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