計画研究
本新学術領域研究では、化学的アプローチ(ケモテクノロジー)を駆使してユビキチン修飾系を理解し、操作する新たな方法論を開拓しようとしており、本研究はその基盤となるツール開発を目的とするものである。その中心となる技術は、UbTACsと名付けた新たなユビキチン化誘導キメラ分子である。まずはその基本形となる既存のE3(セレブロン)のリガンドであるサリドマイドに各種長さのポリエチレングリコールリンカーを介してアジド基を導入した分子を合成した。標的タンパク質リガンドとして、いくつかのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤を選択してアルキンを付与し、サリドマイド誘導体とのキメラ化合物を作成した。一方、新規のUbTACsを創製するためには、新たなE3リガンドが必要となる。そこで、膜タンパク質輸送を制御するユビキチンリガーゼであり、K63 鎖を特異的に形成する NEDD4 に結合するE3リガンドを理研天然物化合物バンク(NPDepo)の天然物を中心とする約22,000化合物を固定化した化合物アレイによりスクリーニングを行い、158種のヒット化合物を取得した。次に、ビアコアにより、158種のヒット化合物とNEDD4との結合親和性の解析を行い、2種のリガンド候補化合物に絞り込んだ。これらの構造類縁化合物を購入し、構造活性相関の解析を行なっている。また、ユビキチン関連分子に特異的に結合するデコーダーのユビキチン結合ドメインを標的とし、ユビキチンとの相互作用を阻害する化合物の探索を行うため、分泌型で輝度が非常に高い、海生カイアシ類Gaussia princeps由来のルシフェラーゼを用いた2分子蛍光補完法を開発し、最適化した。今後これを用いて、新たなデコーダ分子解析用ケミカルプローブの開発を目指す予定である。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、新規のE3リガンド及び標的タンパク質リガンドを探索し、それらを組織的にキメラ化してUbTACsを創製する計画であり、そのためにはクリック反応等を利用した効率的なキメラ化技術が必要となる。そこで、2018年度はそのための基盤を構築するため、E3であるセレブロンのリガンドとして知られているサリドマイドに各種長さのリンカーを介してアジド基を導入した。これを用いることにより、今後、さまざまな標的タンパク質リガンドを効率よくキメラ化できると考えられる。新たなE3リガンドの探索に関しては、NEDD4リガンドの化合物アレイによる探索、結合親和性の解析が終了し、現在、それらの構造類縁化合物を用いて構造活性相関を引き続き行っている。また、他のE3リガーゼおよびプロテアソームタンパク質についても、領域内の計画班員からすでに受け入れており、今後、化合物アレイによるスクリーニングを行なっていく予定である。また、ユビキチン関連分子とそのデコーダーの相互作用阻害剤を開発するための最適な評価系を特定することを目的に、各種細胞内タンパク質間相互作用の検出技術を比較検討した結果、独自に最適化したGaussiaルシフェラーゼの2分子蛍光補完法が最も優れていると考えられたため、これを用いた各種評価系の構築を領域内の研究者との共同研究として開始した。このように、当初の計画通り、おおむね順調に進展している。
まずはNEDD4リガンド候補として同定した化合物の活性、特異性、有用性を検証する。さらに、NEDD4に続いて領域内の共同研究を拡大し、新たなリガンド候補化合物の化合物アレイによる探索を実施する。得られた候補化合物については、構造活性相関を行い、キメラ化するための官能基の特定を行っていく。また、2018年度に整備したキメラ化基盤をもとに、各種キメラ化合物の合成を行い、その活性や特異性を評価する。ユビキチン関連分子とデコーダーの結合を制御する新たな化合物の探索系として、Gaussiaルシフェラーゼの2分子蛍光補完法を第一選択とし、1つの評価系あたり、推奨される8種類の異なるコンストラクトを作成して感度の高いものを選択していく計画である。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (27件) (うち国際共著 12件、 査読あり 27件、 オープンアクセス 10件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)
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