研究領域 | ケモテクノロジーが拓くユビキチンニューフロンティア |
研究課題/領域番号 |
18H05504
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡本 晃充 東京大学, 先端科学技術研究センター, 教授 (60314233)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ユビキチン / 化学合成 / ペプチド / DNA / ヌクレオソーム |
研究実績の概要 |
領域設定期間内にスーパーユビキチンの合成を目指している。中間評価までに、ユビキチンモノマーおよび機能化されたユビキチンの合成法を確立する。事実、以下の通り、ユビキチンの合成ルートを確立し、様々な機能化ユビキチンを合成した。 1. ユビキチンの合成…ユビキチンの合成ルートを確立した。ユビキチンを2つのフラグメントに分割して(F45とA46の間)、それらのフラグメントペプチドの合成、ケミカルライゲーションによるフラグメントの連結、ライゲーションに用いられたシステインの脱硫反応によってユビキチンを化学合成した。 2. ユビキチン機能解析に資するユビキチンユニットの設計と合成…標識導入可能なユビキチンの作成および安定同位体標識GG分岐ユビキチンの合成を行った。ユビキチンコードデコーダーなどのユビキチン結合タンパク質を捕捉することを目指して、光親和性標識などの標識が表出する各種ユビキチン(L8C、V70C、L73C、+C77)の合成を行った。また、我々は、存在の可能性が高いユビキチン鎖を対象に、その分解生成物である各種のGlyGly転移ユビキチンおよび安定同位体で標識した各種のGlyGly転移ユビキチンを合成した。 3. ユビキチン修飾大型生体分子の合成…H2AK119ubの合成および核酸-ユビキチンキメラの合成を行った。H2AK119ubは、上述のユビキチン合成法とH2Aヒストンタンパク質合成法を組み合わせて合成された。また、核酸-ユビキチンキメラの合成では、転写因子NFkBが認識するDNA配列を含むヘアピンDNAを合成し、ここへユビキチンCys付加体をチオール-マレイミド結合を介して連結した。この構造に対して、ユビキチンリガーゼを作用させるとNFkB認識ヘアピンDNAが結合したユビキチン鎖を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
さまざまなユビキチンを合成するルートを確立して、実際に合成を達成した。今後ユビキチンさを作製するうえで大きなヒントになる。
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今後の研究の推進方策 |
1.合成スーパーユビキチンを用いた発展研究…進捗中の合成ユビキチンを用いたスーパーユビキチン研究を一層発展させる。 2.スーパーユビキチン鎖の物性解析ならびにユビキチンコードの形成解析…ポリユビキチン鎖をミリグラムスケールで合成する予定なので、溶液中の高次構造をクライオ電子顕微鏡を用いて明らかにする。この構造データは、位置特異的に機能を導入した新たなスーパーユビキチンの設計のためにフィードバックする。また、ポリユビキチン鎖末端を金基板に固定して、結合タンパク質との結合力を表面プラズモン共鳴を用いて定量する。ポリユビキチン鎖もしくは結合タンパク質のアミノ酸を変えて結合力を測定することによって、結合タンパク質によるユビキチン構造の認識の本質を明らかにする。 3.ユビキチンコードのデコーダー分子の捕捉と同定…新しいユビキチンコードK48/K63分岐鎖やK63/M1混合鎖の存在が領域内の研究によって明らかにされている。これらはK48鎖やK63鎖、M1鎖とは異なる機能を有することが期待される。そこで、光親和性標識およびビオチンで修飾されたK48/K63分岐鎖やK63/M1混合鎖を合成し、新規のデコーダー分子を探索する(佐伯班・岩井班との共同研究)。また、M1、K63鎖は細胞死の実行に関与することが示唆されているため、脱ユビキチン化酵素耐性のM1、K63鎖を細胞に導入し、細胞死に関わるデコーダー分子を同定する(佐伯班・岩井班との共同研究)。その他、化学合成ユビキチン鎖、スーパーユビキチンを領域全体に提供し各種スクリーニングに用いる。
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