研究領域 | ゲノム配列を核としたヤポネシア人の起源と成立の解明 |
研究課題/領域番号 |
18H05508
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
鈴木 仁 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (40179239)
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研究分担者 |
遠藤 俊徳 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (00323692)
増田 隆一 北海道大学, 理学研究院, 教授 (80192748)
伊藤 剛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度解析センター, チーム長 (80356469)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | ハツカネズミ / 全ゲノム解析 / ヒョウタン / ヒト随伴動物 / ヒグマ / イネ / 縄文・弥生時代 / 第四紀環境変動 |
研究実績の概要 |
今年度は、ユーラシア産マウス100個体に関する全ゲノム解析を実施した。年度末までに当該のDNAシークエンスの作出を終了し今後の配列解析に向けた準備を整えた。ネズミ亜科に属する野生ネズミ類において周期性のある環境変動によって誘起された複数のイベントをcalibration pointsとして活用し、ミトコンドリアDNAの精密な進化速度を推定するした。その結果、ミトコンドリアDNAにおいて過去15万年間の時間依存的化速度の標準曲線の作出を行うことができた。また、現代のイネの中から、日本列島へ来歴に関与すると思われる品種に注目し、それらの全ゲノム配列を解読した。ジャポニカ及びインディカの参照ゲノムと比較しSNPを解析し、基本的なデータを得るための解析パイプラインを作成した。HiSeqもしくはMiSeqのショートリードを対象としてBWA-MEMでマッピングし、GATK、Freebayes、DeepVariantでSNP等を検出した。JRC21という赤米は、農研機構のジーンバンクではジャポニカとされていたが、今回、JRC21が明らかにインディカに近いことが判明した。栽培株3種類(アジア型 Laos #S1、アフリカ型 Namibia #348、アメリカ Mexico #600)および、野生近縁種L.sphaerica (#362), L. abyssinica (#451), L. breviflora (#381)のNGS解析およびバイオインフォマティクス解析を進め、3大陸の栽培株とアフリカの野生種3種の遺伝子スペクトル比較結果から、栽培種固有の遺伝子群の候補を得た。北海道ヒグマの三重構造を検証するため、北海道内のヒグマについて、サンプリング地域と母系遺伝子型の確認を行った。全ゲノム解析のために、母系遺伝子解析や父系遺伝子解析のデータに基づきサンプルの選定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
100個体の野生マウスの全ゲノム解析はすでに一次の生データが取得され、現在、系統地理学的比較のためのゲノムデータの解析が進められている。核全ゲノムおよびミトコンドリア全ゲノム情報が集団動態の解析に順次活用されていく状況となっている。ミトコンドリアの精密な進化速度の推定については、ヤチネズミ類を対象とした研究論文が国際誌において受理された(Honda et al., Journal of Mammalogy, in press)。日本列島の生物種において同様に環境変動の周期性に着目して同様に時間依存的進化速度の推定は可能であり、本ヤポネシア研究の進展に大きく寄与できる成果であると考えている。次世代シークエンサーを用いた古代米の研究も進行している。ヒグマの全ゲノム解析は、サンプルの策定が終了し、全ゲノムの塩基配列取得に向けた作業も始まっている。ヒョウタンの全ゲノム解析も下準備は順調になされた。また、核ゲノム解析が進めば機能的遺伝子の分子進化の動態の機微にも迫れると考えており、モデル生物でもあるマウスにおいては、個々の機能遺伝子を研究する研究やとの情報共有をすることで、新規の研究が数多く立ち上がるものと期待している。一例として、毛色多型を演出するAsipという遺伝子に着目し、その腹部毛色に特異的なプロモーター領域の変異と腹部毛色との関係性について予備的に調査を進めている。さらに、全ゲノム情報の使用が可能になれば、詳細に、遺伝的背景も把握した上でゲノム編集技術を用いた有益な変異個体作出も可能となるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究目的の達成のために、有益と思われる研究を模索し実行する。ヒトに帯同する動物種について対象を広げる。哺乳類においては、クマネズミ、ドブネズミ、ジャコウネズミといった他のヒトに帯同して移入したと考えられ種について予備的調査を行う。現在、ミトコンドリアDNAの変異の解析は進め、クマネズミにおいて日本列島の中では宮古島諸島に特異的なハプロタイプを見出している。鳥類においては、住家性の傾向を示すハシブトガラスとハシボソガラスに着目し、日本列島への移入に関しヒトの影響がなかったかミトコンドリアDNAをマーカーとして研究協力者のAlexey Kryukov博士と現在協議を行っている。ニワトリ、ブタ、ウマといった家畜およびネコといった随伴動物、さらには人獣共通感染症に関わる寄生虫やウイルスにも注目し情報収集を行う。総括的な観点で本研究課題の遂行に取り組んでいきたいと考えている。
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