研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
18H05513
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
折茂 慎一 東北大学, 材料科学高等研究所, 教授 (40284129)
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研究分担者 |
山室 修 東京大学, 物性研究所, 教授 (20200777)
齋藤 寛之 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 上席研究員(定常) (20373243)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 水素 / ハイドロジェノミクス / 高次水素機能 / 水素クラスター / 高圧合成 / 超イオン伝導 / 超伝導 / 量子ビーム |
研究実績の概要 |
本年度は、主にステージⅠ、すなわち水素クラスターの高配位化を可能にする高密度化技術を確立し、高配位水素クラスターを含む高密度水素化物の合成を進めた。 1)高密度化技術の開発:水素の高密度化には高圧合成が有効であるが、その際に用いる内部水素源として金属水素化物やアンモニアボラン等を含めたいくつかの材料系を検討した結果、目的とする高配位水素クラスターを含む高密度水素化物の合成には水素化アルミニウムが最適であることを確認した。この内部水素源としての水素化アルミニウムの合成過程での高純度化や良質な特性を保つための保管方法に関して、領域内で技術共有した。さらに、高圧合成した高密度水素化物の結晶構造精密解析のための今後の中性子回折実験等を見据え、重水素置換に関する技術等も習得した。 2)高配位水素クラスターの創製と形成過程の解明:中心金属としてニッケルなどの遷移金属を含む場合およびホウ素などの非金属を含む場合の2種類の水素クラスターを選定して、その形成および分解(脱水素化)過程の解明を進めた。前者の場合は反応過程での新たな中間相の形成、また後者の場合は制御因子としての温度条件等の解明を進めた。 さらにステージⅡ、すなわち学問分野の枠を超えた水素機能の融合も開始し、研究項目A02(水素界面局在機能)や研究項目A05(水素先端計測・シミュレーション)とも連携することで、新たな高密度水素化物の結晶構造や物性の解明と超イオン伝導機能の誘起に関する研究等が進展した。また研究項目A01(水素高密度凝集)の中での連携も深化させ、新たな水素化物超伝導の発見にも至った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
水素-ホウ素クラスターを含む新たな高密度水素化物の合成とリチウム超イオン伝導機能の誘起に関する研究が大いに進展した。さらにこの高密度水素化物が、高エネルギー密度化が実現できる次世代リチウム-硫黄全固体電池デバイスのリチウム負極に対して高い安定性を示す新たな固体電解質として機能することも見出した。実際に全固体電池デバイスを設計してエネルギー密度等を評価したところ、同種の全固体電池デバイスの性能として世界最高のエネルギー密度を示すことを実証した。さらに、水素-モリブデン高配位水素クラスターを有する高密度水素化物も合成、高圧力下で超伝導転移することも世界に先駆けて発見した。これらを総合的に勘案して、「当初の計画以上に進展している」との自己評価をした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、昨年度に構築した水素クラスターの高配位化を可能にする高密度化技術をさらに発展させることで多様な高密度水素化物を合成し、水素機能の融合に向けた材料設計指針を構築することで、ステージⅠからステージⅡに移行する。 1)高密度化技術の発展:水素化アルミニウムなどを共通の内部水素源とした高圧合成技術に加えて、各種溶媒を用いた液相合成技術も新たに導入する。さらに合成試料の中性子回折実験を見据え、液相での軽水素-重水素置換に関する知見も得る。 2)高配位水素クラスターを有する高密度水素化物の合成:上記の複数の高密度化技術を駆使し、引き続きこれまで合成が困難であった遷移金属・非遷移金属を主相とする高配位水素クラスターを有する高密度水素化物を合成する。 3)水素機能の融合に向けた材料設計指針の構築:研究項目A05(水素先端計測・シミュレーション)と連携して、さらに国内外の量子ビーム関連施設も利用しながら、新たな高密度水素化物の原子・電子構造解析を進めるとともに、研究項目A02(水素界面局在機能)やA03(水素高速移動機能)とも連携して、超イオン伝導や超伝導などの超機能の誘起に必要な水素機能の融合に向けた材料設計指針を得る。
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