計画研究
本年度も、ステージⅠで構築した高密度化技術を駆使して、ステージⅡに相当する水素クラスターを含む高密度水素化物の高圧合成や水素クラスターの物性・ダイナミクス解明、機能付与に関する研究を継続するとともに、領域全体での連携に相当するステージⅢへも展開した。引き続き、学問分野の枠を超えた水素機能の融合を重視し、研究項目A02(水素界面局在機能)や研究項目A05(水素先端計測・シミュレーション)に加えて、研究項目A03(水素高速移動機能)やA04(水素反応プロセス促進機能)との研究項目・計画研究をまたいだ連携、さらには複数の公募研究や海外研究機関との連携を、より広域的に展開した。1)ステージⅠで開発した内部水素源を用いて、A01内連携により高圧合成法での新たな高密度水素化物の探索を継続することで、これまで報告がなされていないコバルト-チタン系金属水素化物などの合成に成功した。2)金属水素化物に関しては、A05ならびに海外研究機関とも連携して、イットリウム-マグネシウム系金属水素化物に関する詳細な中性子構造解析等を進め、水素の高密度化に資する新たな水素占有サイトの発見にも至った。3)さらに、昨年度発見した水素とホウ素から形成された水素クラスターを含む高密度水素化物でのリチウム超イオン伝導性の起源を探るために、複数の水素クラスターの混合組成域を広く設定してそれらの固溶限などを解明した。さらに、海外研究機関と連携して、複数の水素クラスターを含む類似の高密度水素化物でのLi-NMRを測定することで、リチウムイオンの協奏運動の兆候をつかんだ。4)高いイオン伝導性を示す高密度水素化物に関しては、1価のリチウムイオンに加えて、より伝導が困難である2価のマグネシウムイオンを含む水素化物の合成にも成功、公募研究者との連携により全固体電池の固体電解質としての機能付与の研究にも至った。
1: 当初の計画以上に進展している
上述したマグネシウムイオン伝導性に関しては、これまで知られている範囲では固体中での世界最高値となり、まさに予想外の成果となった。また、水素化物中でのイオン伝導性に関する協奏運動の兆候が得られたことは、今後の詳細な研究につながる重要な成果と言える。さらに、新たに圧力熱量効果や高エネルギー粒子遮蔽効果などの可能性も広がっている。これらを総合的に勘案して、「当初の計画以上に進展している」との自己評価をした。
引き続き、研究項目・計画研究をまたいだ連携や公募研究との広域的な連携、さらに海外研究機関との連携を強化することで、主にステージⅢを実施する。1)従来は合成困難とされてきた元素群を多用して、新たな高密度水素化物群の合成とそれらの水素化物での高次水素機能の誘起に向けた研究をさらに展開する。2)国内外の量子ビーム関連施設や高精度な熱分析装置等を用いて、さらに水素データ同化技術を含む数理科学的手法も導入することで、引き続き水素クラスターの動的挙動と周囲の様々な陽イオン伝導性との相関などの解明を進める。3)さらに、リチウムイオンだけでなく、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの多価イオンを含む高密度水素化物にも展開し、全固体あるいは液系電池を含めた次世代電池設計に向けた研究を加速する。4)公募研究も含めた連携研究に基づいて、新たな水素クラスターや二次元材料等を合成、領域内連携での高次水素機能の誘起により、超イオン伝導・超伝導・高密度水素貯蔵等を示す超機能材料の合成を目指す。
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すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (24件) (うち国際共著 6件、 査読あり 24件、 オープンアクセス 14件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 備考 (3件) 産業財産権 (5件) (うち外国 1件)
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