研究領域 | ハイドロジェノミクス:高次水素機能による革新的材料・デバイス・反応プロセスの創成 |
研究課題/領域番号 |
18H05515
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
宮武 健治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50277761)
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研究分担者 |
福井 賢一 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (60262143)
小柳津 研一 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90277822)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 水素 / ハイドロジェノミクス / 高次水素機能 / 創蓄電デバイス |
研究実績の概要 |
スルホン酸化ポリフェニレン系高分子において、フェニレン環の置換位置や配列規則性を詳細に解析し、プロトン伝導度や機械強度に及ぼす影響を明らかにした。 高分子の水素貯蔵に関わる双安定性を利用した水素の貯蔵・放出の高速・高密度化:水素供与体と受容体が同程度に安定である「双安定性(を有する)高分子」を利用して,水素貯蔵部位と主鎖構造の工夫により,水素の貯蔵と放出を高速化・高密度化させた。A04と連携しながら,高速水素発生を担うイリジウム触媒を明らかにし,水素発生の反応速度定数から定量的に把握した。 高分子膜への水素の貯蔵・放出機構の解明とその界面における速度の決定のため,高分子膜に接触した金属電極による電気化学的還元(水素吸蔵)過程を独自開発した界面分光によって解析した。その結果,電極から高分子中のケトンへの電子供与(ジアニオン形成)とその電子の分子間移動に比べ,水分子からのプロトン引き抜き(アルコールの形成)とそのプロトンの分子間移動は制限されていることが示唆された。これら電子とプロトンの分子間移動能は燃料電池の出力密度に強く関わるため,引き続き要因の解明を進める。 水素貯蔵性高分子シートをアノード側に内蔵した燃料電池セルを設計し、発電試験を行った。セルを80℃に加熱するだけで水素発生が始まり、1 mA/cm2の電流密度で約500秒間発電できた。また電流密度を10 mA/cm2まで増加させても発電が可能であった。発電後に常温に冷却して水素を供給することにより水素貯蔵性高分子シートは再度水素を固定することができ、発電と充電を繰り返して行うことができるリチャージャブル燃料電池の原理を実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
他計画研究や公募研究とも連携しながら、計画を前倒して以下の重要成果を得た。 ・高分子構造やモルフォロジーの詳細解析を行い、プロトンや水素が高速移動するプラスチックフィルムの構造要件を明らかにした。 ・双安定性構造を利用して、水素貯蔵高分子の高速化・高密度化を可能とした。 ・水素貯蔵高分子と金属電極の界面の挙動を解析し、電子・プロトンの分子間移動を明らかにした。 ・昨年度に溶液中でのモデル実験に成功したリチャージャブル燃料電池を、水素貯蔵高分子を用いた全固体高分子型に展開し、原理実証とサイクル安定性を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
本計画研究では5年間の間に、水素高速移動機能の高度化(ステージⅠ)、学問分野の枠を超えた水素機能の融合(ステージⅡ)、領域全体での多彩な高次水素機能の誘起(ステージⅢ)に順次取り組む。 超プロトン伝導性フィルム: プロトン高速化に高密度凝集機能を融合し、酸性水溶液に匹敵する高プロトン伝導度と高耐久性を両立する高分子材料を創製する。 水素貯蔵の双安定性に基づくプロトン高速移動:プロトンの交換反応速度定数を指標として,水素発生速度(水素キャリア材料としてみたときのパワー密度)を現状の100倍以上まで高速化できる高分子を設計する。A04の藤田らとの連携により明らかにした1,4-ブランジオールを水素付加体とする高分子構造を展開し,広く脂肪族2級アルコール/ケトンに拡張して,高速・高密度な水素貯蔵を担う有機高分子の一群を明確にする計画である。 水素貯蔵高分子と金属電極の界面分光解析:昨年度見出した電子とプロトンの分子間移動能の違いは,単純に高分子内のレドックス活性部位の距離というパラメータでそれらの移動能が記述できない可能性を示唆するものであり,開発した界面分光の電極からの深さ方向分析能を活かした解析を進める。同時に,新たな水素付加体として提案している有機高分子についての測定結果をフィードバックしながら,材料の最適化を加速させる。 新発想エネルギーデバイスへの展開: 領域全体で連携してレドックス活性分子を用いたリバーシブル燃料電池の開発に取り組み、原理実証とサイクル安定性を評価する。
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