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2021 年度 実績報告書

時間の獲得の個体発生と系統発生

計画研究

研究領域時間生成学―時を生み出すこころの仕組み
研究課題/領域番号 18H05524
研究機関京都大学

研究代表者

平田 聡  京都大学, 野生動物研究センター, 教授 (80396225)

研究分担者 上原 泉  お茶の水女子大学, 人間発達教育科学研究所, 教授 (80373059)
酒井 裕  玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (70323376)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2023-03-31
キーワード比較認知科学 / 発達心理学 / 数理脳科学
研究実績の概要

本領域内では、自然言語処理手法であるBERTにもとづいて、時間に関するラベルづけしたコーパスでータを大量に学習した人工神経回路を構築した。この人工神経回路に、様々な年代が作文した文章データを入力することにより、年代や性別によって時間関係の表現に関してどのような違いがあるのか調べた。人工神経回路の内部状態空間で、年代の違いを可視化し、大まかに小学生とそれ以上の年代で大きな差がみられることがわかった。さらに詳細な解析を実行中であり、論文化への準備を進めた。
また、子どもがどのように楽しく長く過ごせるようになるかを調べた。2歳頃の子どもにおいて、玩具のサイズをミニチュアに変えたときに、遊び方を変えられない(スケールエラーを示す)子どもと、柔軟に遊び方を変えられる子どもがいることが知られているが、柔軟に遊び方を変えられるほうが、持続的に楽しく遊べることを意味する。日英の幼児を対象に概念課題を行い検討した結果、英国の幼児においては、図柄に対して局所的な注意を向ける傾向が強い場合にスケールエラーを示しやすいという結果が示されたが、日本の幼児においてはそれとは異なる傾向も認められた。こうした結果を含めて、幼児における、楽しめる術が持つ意味とその能力に関わる要因、その育成法について、別の論文や書籍にまとめた。
さらに、行動とその結果が時間的に離れている際に、状態遷移の連鎖を用いなくても関係性をチンパンジーに学習できるかどうかを調べ、少なくとも一部のチンパンジーでは状態遷移の連鎖を用いなくても学習できていることをいくつかの行動データの分析によって示した。さらに強化学習モデルによるフィッティングにより、状態遷移の連鎖を用いない学習戦略の妥当性を示し、論文化への準備を進めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

コロナ禍によってヒトを対象としたデータ収集に制限が生じたため経費繰り越しをおこなったが、既存のデータの分析やまとめに重点をおいて、論文化や書籍化をすすめるとともに、年度末近くになり、コロナ禍下での制限が徐々にゆるやかになるに伴って、一部調査を再開できるようになってきた。全体的には、計画調書に記載した研究計画の主要な部分に着手し、データの収集を継続している。領域内での他の班との連携研究も着実に進行し、著書や論文として成果が出てきている。ヒトの言語表現に関する発達研究に関して、特定の幼児を対象にした縦断研究をおこない、領域内のA01班の嶋田代表と本D01班代表の平田との共同執筆として本を出版した。E01班との共闘研究として実施した認知症患者のかたのアイトラッカー研究も論文として成果を刊行した。D01班の公募班の伊藤との共同研究である脳波研究も成果が実を結んだ。また、本計画班の重要な役割として、領域内のA01班において構築中の人工神経回路に、様々な年代が作文した文章データを入力して時間関係の表現が年代や性別によってどの程度異なってくるのかを調べる研究が付託されているが、これまでの分析により、年代による差異が検出できる傾向が掴めてきた。先述の通りコロナ禍によってデータ収集を延期せざるを得ない事態は生じたが、繰り越しによって当初目的は達成することができている。以上により、おおむね順調に進展していると判断できる。

今後の研究の推進方策

ヒトを対象にした研究については、新型コロナ感染症に対する国や大学の政策などの変化により、対面調査再開に向けた参加者募集を始めており、今後は、コロナ禍で利用しすすめたオンライン調査も利用しながら、対面調査を推進していくことで、当初計画の研究内容を粛々と展開していく。ヒト以外の動物を対象にした研究については、すでに手法は固まっており、予定通り継続することで着実に成果を見込むことができる。ただ、コロナ禍によってデータ収集が困難になっている部分があるのは事実であり、当初予定したスケジュールの延期を迫られることは想定する必要があるが、研究計画の大きな変更が必要となる事態は生じておらず、新型コロナ感染症の影響を最小限に抑えるように努めたい。それ以外には、研究を遂行する上での問題点は存在しない。概ね当初予定した研究計画の通り推進する方策である。次年度が最終年度であり、期間全体の成果の取りまとめを視野に入れて、本D01班に付託された役割を果たしていきたい。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 3件、 査読あり 9件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] “できる力”から“楽しむ力”を育てる時代へ ―子どもの遊びとナラティブ―2022

    • 著者名/発表者名
      上原泉
    • 雑誌名

      チャイルド・サイエンス

      巻: 24 ページ: 66-70

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Chimpanzees (Pan troglodytes) exhibit gaze bias for snakes upon hearing alarm calls.2022

    • 著者名/発表者名
      Sato Yutaro、Kano Fumihiro、Morimura Naruki、Tomonaga Masaki、Hirata Satoshi
    • 雑誌名

      Journal of Comparative Psychology

      巻: 136 ページ: 44~53

    • DOI

      10.1037/com0000305

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Cerebral cortical processing time is elongated in human brain evolution2022

    • 著者名/発表者名
      Itoh Kosuke、Konoike Naho、Nejime Masafumi、Iwaoki Haruhiko、Igarashi Hironaka、Hirata Satoshi、Nakamura Katsuki
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 1103

    • DOI

      10.1038/s41598-022-05053-w

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Studying feral horse behavior from the sky2022

    • 著者名/発表者名
      Hirata Satoshi
    • 雑誌名

      Artificial Life and Robotics

      巻: 27 ページ: 196~203

    • DOI

      10.1007/s10015-022-00746-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Children’s scale errors and object processing: Early evidence for cross-cultural differences2021

    • 著者名/発表者名
      Ishibashi Mikako、Twomey Katherine E.、Westermann Gert、Uehara Izumi
    • 雑誌名

      Infant Behavior and Development

      巻: 65 ページ: 101631~101631

    • DOI

      10.1016/j.infbeh.2021.101631

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 発達の二大理論と次にくる理論 ―ピアジェの発達段階説とヴィゴツキーの社会的相互作用説2021

    • 著者名/発表者名
      上原 泉
    • 雑誌名

      心理学:理論の楽しみと使い方/理論バトル(繁桝算男編著)

      巻: 1 ページ: 17-32

  • [雑誌論文] Great apes’ understanding of biomechanics: eye-tracking experiments using three-dimensional computer-generated animations2021

    • 著者名/発表者名
      Sato Yutaro、Kitazaki Michiteru、Itakura Shoji、Morita Tomoyo、Sakuraba Yoko、Tomonaga Masaki、Hirata Satoshi
    • 雑誌名

      Primates

      巻: 62 ページ: 735~747

    • DOI

      10.1007/s10329-021-00932-8

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Eyes Are More Eloquent Than Words: Anticipatory Looking as an Index of Event Memory in Alzheimer's Disease2021

    • 著者名/発表者名
      Hanazuka Yuki、Futamura Akinori、Hirata Satoshi、Midorikawa Akira、Ono Kenjiro、Kawamura Mitsuru
    • 雑誌名

      Frontiers in Neurology

      巻: 12 ページ: 642464

    • DOI

      10.3389/fneur.2021.642464

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Behavioural synchronization in a multilevel society of feral horses2021

    • 著者名/発表者名
      Maeda Tamao、Sueur C?dric、Hirata Satoshi、Yamamoto Shinya
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 16 ページ: e0258944

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0258944

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Putrescine--a chemical cue of death?is aversive to chimpanzees2021

    • 著者名/発表者名
      Anderson James R.、Yeow Hanling、Hirata Satoshi
    • 雑誌名

      Behavioural Processes

      巻: 193 ページ: 104538~104538

    • DOI

      10.1016/j.beproc.2021.104538

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] 児童期における母子で共に経験した出来事の記憶内容2022

    • 著者名/発表者名
      張海妹・上原 泉
    • 学会等名
      日本発達心理学会第33回大会
  • [学会発表] トピックモデルを用いた年代別作文の時間に関する認識の分析2022

    • 著者名/発表者名
      谷口巴・上原泉・川﨑采香・浅原正幸・酒井裕・越智綾子・小林一郎
    • 学会等名
      言語処理学第28回年次大会
  • [学会発表] 出来事内容の記憶変容に伴い経験時点に関する記憶も変容した事例2021

    • 著者名/発表者名
      上原 泉
    • 学会等名
      日本基礎心理学会第40回大会
  • [図書] 時間はなぜあるのか?2022

    • 著者名/発表者名
      平田 聡、嶋田 珠巳
    • 総ページ数
      236
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      9784623093656

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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